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ヒラヒラと手を振って前の人を追うように舞台袖へ向かう。
黒いカーテンの向こうへ入り舞台上の眩しい光が消えた瞬間、膝がガクリと折れそのまま床へ体が崩れ落ちる。
あれ、おかしいな。
力が入らない。
「藍川さん、しっかりしてください…!!」
「誰か担架を…っ」
その声に俺は「大丈夫。」とだけ答える。
なんでだろう。
今更、たった一つの批判にどうしてこんなに体は驚いてるんだろう。
ガクガクと体が震えて床へその度に打ち付けられる。
出来ることなら消えてなくなりたい。
それがダメなら、こんな風におかしくならないで。
「…おい、藍川!!」
「はい、……?」
いきなり名前を叫ばれてビクリと体が揺れた。
視界の中に誰かの腕が映ると、その腕に体を揺さぶられる。
強制的に覚醒されてるみたいだ。
「甘えるな!!お前は、覚悟してこの道に来たんだろ!?」
「…そうです、ごめんなさい。…大丈夫です。」
「そうだ。起きて自分の足で楽屋まで歩け。できるな?そしたら弁当でも食って茶飲んで寝ろ。他人に弱いとこなんて見せるなそれがプロだ。大人だ。いいな?」
「はい。…そうですね、すみません。」
その声に俺はただ肯定の言葉だけを返した。
そうだ、その通りだ。
俺はまたいけない事をした。
俺は右手で棒みたいになった足を何度も殴った。
痛みで少しずつ感覚が戻ってくる。
次に左手でぼーっとする頭を殴った。
思考が働いてきて呼吸が少し楽になる。
ほら、大丈夫。
すぐ元通りだ。
「迷惑かけてごめんなさい。少し、足つっただけです。ほら…もう平気。皆心配してくれてありがとう。」
立ち上がるとそう言って笑顔で周りの皆にお辞儀をする。
そのまま軽い足取りで楽屋へと向かっていく。
甘えたらいけない。
もう何も考えちゃいけない。
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