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そろそろ帰ろうと携帯の画面を見る。
時間は4:56だ。
仕事と同じスケジュールで動いていいはずだからあと4分で帰っていい。
「…あ。」
「うん?」
「連絡先、登録お願いしてもいいですか?さっきの名刺に書いてあると思うんですけど…」
「わかった。ええと、名刺名刺…」
藍川さんがキョロキョロと周りを見渡したり、服のポケットを手でポンポン叩いたりする。
…まさかもう名刺をなくしたんじゃ。
「藍川さん…?」
「あはは、…どこかにあるの思うんだけど…」
「あぁもう…もう一枚渡すんで絶対に無くさないでくださいよ。」
「はい、ありがとう。」
もう一枚の名刺を取り出すと藍川さんは笑顔で受け取って名刺を何度も読み返す。
…今まで偉い人とどう付き合ってきたんだろう。
そんな事をしているうちにもう5時を過ぎている。
藍川さんは少し心配だが定時上がりの方が優先だ。
「それじゃ、今度こそ帰りますよ?」
「うん。お疲れ様でした。玄関まで送るよ。」
「ありがとうございます。」
そう言われて2人一緒に玄関へ向かう。
ついでに廊下を見ながら歩くと、リビングと寝室と風呂場、トイレ以外にあともう一部屋あるのに気付いた。
…この部屋も荒れてるのか。
「それでは、また来ます。来る前日に連絡するので確認お願いしますね。」
「はい。…あれ、小波くん俺の連絡先知ってるの?」
「会社から事前に伝えられてます。」
「相変わらずプライバシーも何も無いなぁ…あぁ、引き止めてごめんね。それじゃ。」
「はい、お疲れ様でした。」
「お疲れ様です。」
優しく笑うと藍川さんが手を振って見送ってくれる。
これからここに通うことになるんだ。
…大変だけど、きっと楽しい日になるはず。
「んー、…今日は働いたな。」
よれたシャツの袖を手で伸ばしながらどこか違和感のある夕日に照らされて帰り道を下っていった。
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