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「おはよう、小波くん。」
そんな声で本の世界から引き戻される。
つまらない話だった。
ソファの上で優しく笑う藍川さんは顔に服の跡がついていて、今起きました、という顔をしている。
「おはようございます。」
「んー…もう昼だね。」
「何か食べますか?」
「ううん。今はまだいいかな。」
快眠だったのかスッキリした顔でそう言うと起き上がり大きく伸びをする。
どうか、朝来た時にこの反応をしてほしい。
本を閉じて本棚へ戻し振り返ると藍川さんが首をかしげて俺の方を見上げていた。
「どうしました?」
「小波くんは本当に本が好きなんだね。」
「まぁ…でも、藍川さん以外の人が作った話は少しつまらなく感じます。」
「そうかなぁ。俺は他の人の話も面白いと思うよ。きっと俺とは違う世界が見えているから。」
「作家の数だけ世界がありますもんね。でもなんか…好きになれなくて。」
「小波くんが楽しんで本を読めないのは問題だなぁ。」
藍川さんがうーん、と考え込むとしばらくして閃いたように指を立てた。
パァと明るい笑顔になって急に立ち上がるとここ数日で一番楽しそうな顔をする。
「俺がお話を書けばいいんだね!」
「……え、!?」
「そうとなったら紙とペンを用意しないと。少し待っててね。」
まだ顔に跡をつけたままの藍川さんが俺の肩をポン、と叩くと廊下へ向かっていってしまう。
俺は確か藍川さんに本を書いてもらうためにここに来たんだよな…?
まさか、こんな単純な理由でお話を書く、なんて言い出すとは思っていなかった。
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