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夢を見た。
それはずっと昔の夢で。
まだペンを握ったことがないほど古い夢。
そこにもちろん小波君はいないし、偉い人だっていなかった。
そんな夢の中をさ迷っている。
あぁ、ここは夢の中なのだから。
何をしたってきっと許される。
それなら、死んでしまおう。
指を喉へ突き立て切り裂く。
痛みなんて感じない。
「…藍川さん、…?」
「…おはよう、小波くん。」
「酷いうなされ方でしたよ。…大丈夫ですか?」
傍にいる小波くんを見た時、今まで積み重なった不安が溢れ出るような気がした。
きみもまた、いつか俺を捨てるのかい。
ただの赤の他人にこんな感情を抱くのはおかしい。
「平気だよ。少し怖い夢を見ただけ。」
「そう、…ですか。…あの。来てない間、ご飯とかちゃんと食べてましたか?」
「…食べてなかった、って言えば怒る?」
「怒ります。…心配もします。藍川さんはもう少し自分のことを大切にしてあげてください。」
「えぇ。…そう言われるのは初めてだな。」
「普通の人は言われません。言われないような生き方をしてるから。」
小波くんがまるで可哀想な子を見るように俺を見た。
俺はまた、どこかおかしいのか。
不思議な感覚。
どうか俺から離れないでいて欲しい。
どうかそばにいて欲しい。
そして、どうか 嫌いにならないで欲しい。
これがなんなのか俺にはわからない。
でも。
「小波くん、我儘を聞いてくれるかな。」
「なんですか?」
「今日は、…帰らないでいて。」
相当俺は今、弱っているらしい。
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