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体がドアへ押し付けられる。
痛くて、骨が擦れる音がした。
俺はどうなったっていい。
でも、小波くんことは傷つけられたくない。
どうか、もうこれ以上誰かが傷ついていく姿を見たくない。
「なぁ。コレも弟みたいにしたくなかったら、家に帰って来い。一番にかわいがってやる。」
その言葉に大袈裟なくらいに体が震えた。
…弟、みたいに?
「…お願い、します。何も、しないで…っ」
「それなら家に帰ってくる?…ねぇ。」
先生の口が耳元まで近づいてくる。
唾を引くような、ネットリとした話し方。
ずっと、俺はこの声が苦手だった。
大人になったら きっと開放されると信じていたのに。
「…毎日、教えてあげたよね。社会は君なんて求めてない。
愛してやれるのは、俺だけだって。」
「っ、…ぁ……、…」
そうです。
その通りなんです。
だから 俺は、 もう 何も書けなくたって。
俺は この人の下で一生、生きていけば。
誰かに 肯定されたまま 生きていける?
「…──、…お前はとっくに居場所なんてないんだ。」
俺の名前を呼ぶ音が。
心臓を抉るみたいに痛くて。
もう、何もかも 捨ててしまえぱ。
「…っ、離れろって言ってるだろ…!!」
何かに飲み込まれそうになった瞬間。
体から先生が離れて地面へ突き倒される。
呆然とソレを見ていると、小波くんが俺の前へ立ち背中で庇ってくれる。
「俺は殺したっていい、…藍川さんに、手を出すな…っ」
「…なるほどな。」
先生がそう言ってククク、と喉で笑うと立ち上がり小波くん越しに俺を見つめてくる。
怖い、気味が悪い。
見たくないのに目線を外せない。
「また来るからな。…。」
口だけで俺の名前を呼ぶと、笑いながら道路の向こうへ歩いていってしまう。
終わったと思っていたものがまだ続いていた。
身体中の力が抜けて呼吸ができなくなる。
ヘタリと地面へ座り込むと小波くんが優しく俺を抱いては
「もう大丈夫です。」
なんて言ってくれる。
訳の分からない感情に飲み込まれたまま小波くんの体へ体重を預け目を閉じた。
もう、何もかも捨てて生きているはずなのに。
君が傷つくことだけは、酷く恐ろしく感じたんだ。
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