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しばらくした頃、ようやく藍川さんの呼吸が元に戻った。
涙の跡が頬に残りそれが胸を締め付ける。
「苦しくないですか?」
「…ごめん。」
「謝ることなんて何も…」
「君を傷つけて、君を危ない目に合わせた。ごめね。…本当に、ごめん。」
何度も繰り返し謝っては顔を伏せてしまう。
怖い目にあったのは、辛い思いをしたのは俺なんかじゃなくて藍川さんの方だ。
何一つ、貴方は謝ることなんてないのに。
「俺は何もありません。藍川さんの方が心配です。」
「…俺は大丈夫。見苦しい所を見せてごめんね。気持ち…悪かった、よね。」
「そんなことないです。…よく起こるんですか?」
「最近はそんなことなかったんだよ。もう何年も。…だから余計に反動かな。ほら、もう若くないし。」
そう言って無理して茶化すようにして笑った。
グチャグチャになった顔は笑顔なんてもちろん似合わない。
手を前へ差し出し、指先で目に残った涙を拭った。
冷たい 冷たい涙。
「…聞かせてくださいと言えば断りますよね。」
「君は本当に知りたがりだね。」
「そうかも…しれません。」
でも、ただ闇雲に知りたいんじゃなくて。
傷ついていく姿をただただ見つめているのは辛くて。
大丈夫
なんて言葉で誤魔化されていくのが辛くて。
「貴方を守りたい。」
「…平気だよ。」
「守るためには、貴方の事を知らないと守れない。傷つく姿はもう見たくないけど…ただ守るためにと前に出たって皆、貴方に向かってしまうんです。
知れば、知っていれば。…きっと今より守れるから。」
「小波くん、…ありがとう。」
ふわりと優しく笑うと頬に触れていた手に手を重ねられる。
そしてそっと握ると優しい優しい声で
まるで自分のことを殺すように
「ごめんね。もっと早くに少しは言うべきだったのかな。…君を傷つけてしまったことすごく後悔してるんだ。
少しだけさっきの人のことを伝えさせて。
そして君に謝らせて欲しい。」
貴方はどうしてそんなに
「…ごめんなさい。今日のことを、許さないでいて。」
悲しく笑うのですか。
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