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抱きしめられた腕の中で、彼の肩へ顔を押し付け思い出を吐き出す。
話せば なくなるかもしれない。
「弟とふたり孤児院に入ったんだ。…俺も弟も少し複雑な事情があって他の子より外も中も発育が悪かったんだ。弟はまだ乳児だったから知能に問題はなかったんだけど俺はもう5つだったから少し手遅れで。
何をしても人並みには出来ないし…覚えが悪くて。迷惑かけて皆についていけなくて。よく…叱られた。」
「…貴方のせいじゃない。」
「ううん、俺が悪いんだ。他の子はみんな出来たことなんだから。別に障害があった訳でもなくてただ頭が悪かった。だから…先生にはよく怒られたし躾もされた。
それが怖くて。でも先生はいつだって正しかった。悪かったのは本当に俺だけだったんだよ。」
「悪いのは…環境ですよ。だって、発育が遅れていたのもついていけなかったのも…藍川さんが進んでそうなった訳じゃない。」
「そう…なのかな。」
今までそんな風に言われたことは無かった。
叱られて、繰り返し同じことをして。
上手く出来なくてまた叱られた。
…俺が悪いはずなのに。
「そうなんです。貴方が分からなくても…そうなんです。…あの人はずっと藍川さんを理不尽な理由で傷つけてたってこと…ですか?」
「理不尽、なんかじゃ…」
「わかりました。…それじゃ、例えばどんな事で叱られましたか?俺がちゃんと聞いてから判断します。」
「例えば…?」
叱られた理由を思い出すと、それよりもずっと昔の事まで思い出してくる。
思い出したくないのに。
もう知りたくないのに。
思い出さなくてもいい理由。
小波くんに伝えても大丈夫な理由。
「…ええと、…食堂に一番最後に着いたり。ご飯を食べるのが遅かったり、…背が伸びなかったり寝癖がついていたり。」
「待って…ください。」
「うん…?」
「今の、どこが悪いんですか…?」
震える小波君の声を聞いて訳が分からず首を傾げる。
だって 今までずっとそれは悪い事だと最低なことだと教えられてきたのに。
俺を抱きしめていた手がより一層強くなって力強く抱き寄せられた。
そして小さな俺にしか聞こえないような声で
「…貴方は、何も悪くない。」
と泣きそうな声が聞こえてきた。
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