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春がここにきてからたくさん時間が経った。
あの時は暖かかったのにもう寒い。
僕の腕の中で春が寒いよって震えるんだ。
「大丈夫、だよ。」
部屋中のタオルを巻いて僕ごと布団に入って温める。
でも、部屋はすごく冷たくて春の手を冷たくなっていく。
ママに言ってもうるさい、って言われるし他に何をしたらいいかわからない。
ここにいても。
僕も 春も ずっと何も変わらないまま。
毎日を過ごしていくの?
「…ん……っ、春、あのね。小さな時、ママ…教えてくれた。…お外は上が青くて大きいの。」
「……ぅ、…」
「…っ、僕達。…いつか青の下にいける、かなぁ…」
春は目を閉じたまま動かなかった。
爪の先の色が変わってる。
…どうして?
僕の指と見比べても色が全然違う。
慌ててタオルをどけて服の下を見る。
手と足の先の色が違って、冷たくて動かない。
春が壊れちゃった。
怖くてタオルでまた隠して抱きしめる。
春、まもりたいのに。
僕、なにもできないよ。
外が明るくなって、コンコンとママの足音が聞こえてくる。
急いでドアの前まで行って見上げるとママがいつもの怖い顔で僕を見た。
「春、…壊れちゃった。」
「何が。」
「冷たい、…色、違う。」
「叩け。」
「…え?」
「それ叩け。」
「やだ、…いたい、から。」
「叩けって言ってんだろ!!」
ママの靴の先、尖ったところが春に当たる。
春が僕の腕から落ちて床へ頭が当たる。
やだ、やだ。
「しゅ、…っん、…」
「っぅ、わァああああっ、!」
「生きてんじゃねえか、殺すぞ!おい!!」
「だっ、て…やめてママ、っ…春にこわいこと、やめて…っ」
ここにいたら
ママが僕も春も殺しちゃう。
やだ そんなのこわい
僕は春をまもりたい
ごめんなさい
僕
いいこで いたかったのに
「春、…大丈夫だよ。」
僕は春をぎゅっと抱きしめてママの後ろにあった扉の外へ飛び出た。
灰色の壁。
それからその向こうにはとっても大きな部屋が続いてたんだ。
弟が生まれて最初の冬。
寒くてね。
弟は酷い凍傷になっちゃったんだ。
俺はまだその時よくわかってなかったけど、母親のこともその環境のことも初めて"ここはおかしい"って思ったんだ。
俺はその時まで外の世界なことは何も知らなかったから。
春を抱きしめて真冬に薄いTシャツ1枚で外に逃げ出した。
後ろから母親が大声で何か叫んでたけど気にせずに。
俺にとって春は初めてできた生きる希望で、理由だったから。
でも今になってみると……
どうして もっと早くいろんなことに気付けなかったのかななんて思うよ。
だって 春はたくさんのものを失ってしまったから。
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