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目が覚めた部屋は、今まで藍といた部屋よりずっと狭かった。
部屋にはベッドはなくて薄い布団だけ。
部屋の端に小さな机と椅子、後はトイレと洗面台しかないそれだけの部屋だった。
「…藍、…」
慌てて扉に手をかけるけど、ガチャガチャと音がするだけで開かない。
周りからはなんにも音が聞こえない。
時計もない、窓もない。
時間がわからない。
今は何時?朝?昼?夜?
ここはどこ?お家の中?
誰もいないの?
怖くなって部屋の中をうろうろと歩き回る。
洗面台を見ると、殴られた場所が大きく腫れて唇は切れて血が固まっていた。
「…汚い。」
慌てて水道をひねって顔を洗う。
洗っても腫れた頬は治らない。
こんなに汚い顔じゃ生きてる価値が全部なくなっちゃう。
両手で鏡を隠して見ないフリをしてまた部屋を歩き回る。
唯一置いてあった机。
引き出しの中にはたくさんの原稿用紙と、それから鉛筆が3本。
俺の世界はもう これだけしかない。
13歳の冬。
俺は完全に隔離されちゃったんだ。
本当にドジで隠し事もできなくて全部バレちゃって。
ご飯とお風呂の時だけ出してもらえた。
毎日一人きりの部屋で話を書いてた。
その話をね、こっそり弟に渡すの。
毎日、少しずつ。
藍が1人きりで眠れなくて悲しまなくていいように。
俺は相変わらず何も変わらなくて、よく先生に叱られてお仕置きされて…
時々一人で寝込んで、誰も助けてくれなくて。
時間になっても食堂に行けなくてまた叱られて。
あはは、面白いよね。
なんのために生きてたのかなぁなんて今思い出してもよくわからないけどあの頃の俺には死ぬ意味も選択肢もなかったんだと思う。
ただ 生かされてたから。
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