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「藍川さん、お肉も食べてくださいよ。国産ですよ。」
「小波くんってなんか貧乏臭いよね…」
「はい!?そりゃ俺は一般人ですから…」
「あはは、ほら。お肉食べて。」
「…藍川さんはまたそうやってお芋ばっかり…」
俺の我が儘で大皿に入れてもらった肉じゃがを2人でつつく。
予想以上に大量に出来たソレに対して「こんなに沢山食べられないよ」って言ったら残った分は肉じゃがコロッケにしてくれるらしい。
焼き魚は指定しなかったせいで俺の知らない謎の大きな魚が出てきて、小波くんはソレを器用に解体しては美味しそうに食べていく。
「藍川さん、頭から被ったらダメですよ。骨ありますから。」
「横に飲んだら大丈夫だよ。」
「どこのおっさんですか…ほら、俺が解しますから。味噌汁飲んでてください。」
「うんうん、美味しいなぁ。」
彼は俺には甘過ぎるみたいで少しでもできないことは全て面倒を見てくれる。
それに甘える俺も俺なんだけど。
暖かいお麩とわかめの入った味噌汁を飲みながら楽しそうに骨を取る小波くんを眺める。
楽しい、こんな日常をずっと夢見ていたのかもしれない。
「藍川さん、明日のお昼は何にしますか?」
「うん?今食べてるんだから明日の事は考えられないよ。」
「それもそうですね。」
彼は優しすぎるらしくて。
きっと俺以外の全人類にこんな態度なんだと思う。
疑わないし、探らない。
目の前のものを信じる。
「ねぇ、小波くん。」
「なんですか?」
「俺、君には脚本家が向いてると思うよ。」
「…はぁ?」
「あはは、そんな顔しないでよ。いつか気が向いたら書いてみてよ。」
「無理です無理です。俺、小学校の頃から作文すらまともに書けなかったんですから。」
「そう?残念だなぁ。」
目の前の誰かのための話を書くのが彼には向いていると思った。
俺は それが向いてない。
すぐに目を背ける癖があるから。
「出来ましたよ。」
「ありがとう。ね、この魚は何ていう名前なの?」
「ホッケですよ。」
「ホッケか。君はいい名前だね。」
彼に名前を呼んでもらえる、この魚を羨ましいとさえ思った。
…ええと、この魚の名前は…なんだったかな。
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