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コンビニでおにぎり2つとカップスープ、それからミネラルウォーターを4本、チョコと飴を適当買ってアイツの家へ向かう。
アイツはいつも休み無しに書いては無理して体を壊す。
これからメディアの仕事が始まると余計に大変なことになりそうだ。
「…死んでるかもな。」
数年ぶりに働いたんだ、使った体力も今まで以上のはずだ。
そう思いながら当たり前のように合鍵で鍵を開けて扉を開く。
目の前には紙の束を抱きしめて気持ちよさそうに眠る成人の男がいた。
「おい、藍川。」
当然のように応答はない。
顔は真っ青で爪の先まで白い。
ただでさえ体が弱いのにこれ以上自分を苦しめるのは頼むからやめて欲しい。
腕の中から原稿を抜き取って肩を揺らすと揺らしたまたフラリと体が床へ倒れる。
…死んだか。
「死ぬ許可は出してねぇぞ。起きろ。」
「…ん、…生きて、ます。」
「そりゃ良かった、寝るなら飯食ってからにしろ。自分で歩け。」
「は、…い、ごめんなさ…い…」
顔を覗き込むと、目から涙なんか流しながらそう消えそうな声で言った。
あぁ。
すっかり昔のモードになってるらしい。
もう、誰だってコイツに怒鳴り散らす奴なんていないのをすぐに忘れる。
「…なぁ。そろそろ俺の声も覚えろよ。」
「ぁ"、…」
ビクリ、と体が揺れると倒れていた身体が一瞬で起き上がり後ろへ後ずさるようにして廊下へ進んでいく。
俺の声すらもう聞こえてない。
「ゆる、し…て……っ…」
もう一度呼びかけようとした瞬間、目を見開いたかと思うとガクンと体が後ろへ倒れそのまま動かなくなる。
電気切れだ。
「…おつかれさん。」
時々思う。
コイツは、もしかすると昔いたあそこで睡眠すら自由に取らせてもらえてなかったんじゃないかと。
『悪いことをすると、息が出来なくなるまで口にお米…あの、炊く前の米粒です。あれを詰め込まれるんです。
あはは、吐きますよ。吐いたらまたそれを飲むんですけどね。』
苦しそうな顔で眠る姿を見ながら、少し前そんな事を言っていたなと思い出した。
…お前は今ここにいて幸せか?
聞いたって"幸せです"なんて言って笑うんだろうな。
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