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朝、藍川へ電話をかけたがアイツは出なかった。
その代わり30分後にご丁寧にメールが送られてきた。
"
昨晩はすみません。
インフルエンザと薬の影響で意識が朦朧としてました。
熱が下がり次第連絡するので、それまで休ませてください
"
俺は"了解"とだけ返信してそれ以上追求はしなかった。
聞いたってこいつは答えないだろうし、今こうして連絡してくるってことはとりあえずは大丈夫なんだろう。
俺が深追いすることじゃない。
.
「憂くん。」
その声に目を開く。
何も見えないけれど。
見えない手が俺に触れて、服の上から身体をなぞる。
触れた場所が熱くて焼けてるみたいで。
怖いのに俺は何も出来ない。
「ご飯の時間だよ。手のテープをとってあげるから少し待ってね。」
その声に頷く。
一番はじめに目が自由になって次に口が自由になった。
最後に腕が解かれると感覚の無くなっていた腕に血が巡ってチクチクと痺れた。
眩しい部屋に目が慣れてくると、机と上に置かれたご飯にやっと気付けた。
「昨日の憂くんは悪い子だったから今日はお仕置きメニューだよ。今日いい子に出来たら、夜ご飯は美味しいご飯があるからね。」
「…はい。」
「さ、食べて。」
そう言われて俺は力の入らない腕で体を起こし滑り落ちるようにソファから床へ降りた。
薬のせいで心臓はおかしいし、ほとんど力が入らない。
目の前に置かれたご飯は炊かれる前のお米と、ぶつ切りにされた人参。
それからお椀に入ったお湯と焼かれる前の魚。
久しぶりに見たな。
震える手をお箸に伸ばす。
その時、昔の記憶を思い出した。
俺があそこにいた頃、一番に怒られたのは箸を落とす事だ。
今落としたらまたお仕置きが増える。
「ほら、早く食べるんだ。」
「…は、い。」
力の入らない手でなんとか箸を持つと、ガクガクと震えたまま人参をつまむ。
なんとか口まで運んで噛もうとするけれど、麻痺した口は生の硬い人参を上手く噛めない。
やっとで飲み込むけれど、この調子じゃ何時なんもかかってしまう。
「あと20分で食べよっか。」
「…そ、んな…」
「出来ない?」
「…っ、…やりま、す…」
出来なくてもやらないと。
心臓がドクドクと揺れる度に手が震えて、お箸が何度も落ちそうになる。
お茶碗に手を伸ばしてお米へ箸を入れるけれどサラサラなお米は全然取れない。
「口、付けてもいいよ。」
「……ありが、とうござ…います。」
言われるままに口を付け、スープを飲むみたいにお米を流し込む。
硬いお米が口中でグルグルと回る。
乾いた喉に張り付いて、気持ち悪くて
飲み込めなくて
「ぅ"、…お、ぇ…っぐ…っ、…」
一度飲み込んだはずのお米が逆流してボタボタと口から溢れる。
抑えようとした手からお茶碗とお箸が落ちて遠くでサラサラと音が聞こえた。
…殺され、る。
「優しくしてあげたいのに、いい子になれないね。」
「ごめんな、さい…ごめ、ん…なさ、いっ…許し、て…ごめんなさい、っごめ…んなさ、…」
「もう食べなくていいよ。」
「…っひ、……っ…」
「暫くここにいようね。」
床へ倒され、頭を踏みつけられる。
痛くて目を見開くとそのまま俺の事なんて見向きもしないでまた腕がグルグルと巻かれていく。
目隠しまでされた所で遠くからカラカラと瓶の中を錠剤が転がる音がした。
嫌だ、ごめんなさい。
もう悪い事しないから許して。
ちゃんと食べます、やります。
もう 苦しいのは嫌だ。
「憂くん、口。開けて。」
「……は、…ぃ、……」
痛いのも苦しいのも苦手なんだ
優しい誰かに 大切にされて みたかった
少し 幸せになりたかった
「藍川さん。」
少し前
すごく優しい君と 出会った気がするんだ
君と幸せになりたかった
「…ぁ…。」
カクン、と意識がなくなって真っ暗闇に落ちていく。
誰もいない 1人きり
どうして俺は こんなに馬鹿に生まれて来たんでしょう
頭が良くてもっと優しかったら誰かに愛されて幸せになれたのに。
だから
俺はもう このままでいい
もう 何も望まない。
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