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カズマは根っからのロマンチスト。
その手を掴まれるなり、後ろからハグされるなりして、『どこにも行かないでくれ』と言われたいのだろう。
彼が毎週楽しみに見ている恋愛ドラマにそんな展開がよく出てくる。
胸キュンだかなんだか知らないが、ヒィヒィ言いながらのたうちまわっているのを何度見たことか。
その証拠に、
「いいんですか! 本当に本当に行っちゃいますよ!」
右に左に何度も何度も振り返っては、俺の反応をうかがっている。
「本当に本当に本当にカズマくん行っちゃいますよっ」
「……」
「可愛い可愛いカズマくんを引き止めるチャンスタイム到来まで、3……2……」
「あああああッ! もういい! 俺が出てくッ!」
外に出る気なんて一ミリもないカズマを怒りにまかせて押しのけ、炎天下に飛び出す。
「夕飯までにはちゃーんと帰ってきてくださいねぇー!」
俺の気持ちも知らないでのんきにしているカズマの声を背中に聞いた。煮え繰り返る全身の血のせいで、体温がぐわっと上昇したようだった。
返事代わりに舌打ちしてやる。
誰があんなマヨネーズまみれのサラダを食べにわざわざ帰ってやるものか――。
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