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ほれぐすり(1)
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「わしは悪魔じゃ。貴様の寿命と引き換えに、願いを1つ叶えてやるぞ」
お決まりの台詞と共に人間界に飛び出してみたら、目の前にいたのは中学生くらいの気の強そうな女子だった。
「わー、本当に出てきた!ユキくんの言ってた通り!あっ!あのね、わたしはカスミっていうの。あなたのお名前は?」
「さっきも言ったとおり、わしは悪魔じゃ!お前、ちゃんとわかっとるのか?悪魔というのは…」
「わかってるよー!なんでも言うこときいてくれるんでしょ。ユキくんなんて、呼び出した悪魔に身の回りの世話を全部やってもらってるって」
「なんか語弊が…というかその話、聞き覚えがあるんじゃけど」
「あのねっ、あのねっ、わたしはほれぐすりを作ってほしいの!」
「ほれぐすり?…って、なんじゃ?」
「えー、知らないの?飲ませた相手をメロメロにする薬だよお。そんなこともできないなんて、悪魔って案外大したことないんだね」
「知っとる。知っとるわい!すぐ作ってくるから、そこで待っとれ!…い、いや、ちょっと時間がかかるかもしれんから、自由にしててよいぞ!」
「わーい!ありがとう!」
カスミは嬉しそうに跳ねた。
こいつ、悪魔のことを絶対わかっとらん。これ以上舐められんように、威厳を見せんとな。ほれぐすり、とやらをさっさと渡して、寿命をきっちり奪ってやるんじゃ。
「のーのー、ほれぐすりってなんじゃ?」
カスミの説明ではいまいちわからんかったから、部下の043号を呼び出してみた。
043号は、悪魔のくせに中学生の少年に屈服し、寿命も奪わずにせっせとお世話をしている不届きな悪魔じゃ。
「ほれぐすりですか?飲ませた相手に自分のことを好きにさせる薬のことですね」
「ほうほう。それで、それはどうやって作るんじゃ?」
「作れませんよ。架空のものですから」
「…はっ?架空じゃと?」
「人間の欲望が生み出した、この世には存在しない薬です」
「はああ?そもそもよくわからんのじゃが、好きな相手に好きになってもらうって、どういうことじゃ?どうしてそんな必要があるんじゃ?」
「えっ、必要性ですか?子孫繁栄のためですかね。人間はお互いに恋をした相手との間に子どもをもうけますから」
「なんじゃあ恋って」
わしがそう聞くと043号はお手上げだと言わんばかりにため息をついた。
「恋、知らないんですか?上司のくせに、人間の感情について知らなすぎですよ」
「うるさいわい!お前みたいな失格悪魔に言われたくないわ!だいたいお前、あの少年の寿命はもう奪ったか?早く奪えと何度言わせれば」
「そういえば、どうしてほれぐすりのことを聞いてきたんですか?自分に惚れさせたい相手でもいるんですか」
043号はあからさまに話題をそらしてきた。
「そんなやつおらんわ。さっき呼び出してきた少女にほれぐすりが欲しいと言われたんじゃ」
「そうなんですか。それはお断りするしかないですね」
「そういうわけにはいかんのじゃ。あの少女、明らかにわしのことを舐めとった。できないなんて言ったら、心底馬鹿にされるに決まっとる」
「できない約束をするのは馬鹿のやることです」
「うるさいうるさい!いいから一緒にほれぐすりの作り方を考えるんじゃ!…いいアイデアが浮かんだら、減給の件、帳消しにしてやってもよいぞ?」
「おっ、本当ですか?」
「ああ本当じゃ。わしはできない約束はせんからな」
「息を吐くように嘘をつく…」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ別に。…そうだ、こういうのはどうですか」
043号のアイデアを聞いたわしは、すぐにカスミの元へ戻った。
「わー、悪魔さん早かったね。ほれぐすり、どこ?」
「まだじゃ。ほれぐすりを作るためには、貴様の好きな相手が誰なのか知る必要があっての。個人が特定できる情報を教えてくれ」
「えっとねー、となり町にある高校に通ってる人で、よく駅で見かけるの。名前は知らないんだけど、隠し撮りした写真があるよ!」
カスミに見せてもらった写真には、薄茶色の髪の毛と、同じ色の目をした色白の美少年が立っていた。
「なんだか色素が薄いやつじゃな…」
「かっこいいよね!イケメンだよね!」
「まあそうかのー…」
儚げな雰囲気とは対照的に、冷たく鋭い目をしているところが、妙に気になった。
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