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ほれぐすり(3)
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エクソシストの少年は、わしをにらみながら話を続けた。
「特に害はなさそうな悪魔だと思って放っておいたけど…今日、あんたの服のポケットから、禍々しい気配を感じた。何をしようとしてたんだ」
「あああ、それか…」
どうやら淫魔のカルピスの気配に気づいたらしい。狂い死ぬとか言っとったし、やっぱり危ないもんなんじゃろうか。
「出せ」
「うう…」
おそるおそるカルピスを取り出すと、少年はひったくってしまった。
「なんだこれ。危険物か?」
「危険物だったら…?」
「あんたを始末する」
「ひいいっ!ぜ、全然危険じゃないわい!無害、無害じゃ!」
「ならあんた、これ飲んでみてよ」
「うわっ」
少年は瓶の蓋を開けわしの顔に近づけた。
「だ、だめじゃ!これはその…ほれぐすりなんじゃ!」
「…ほれぐすり?どうしてそんなもの…」
「お前に飲ませるためじゃ!」
「…は?」
「お前に恋をしてもらうために、用意したんじゃ!」
「…なにそれ?告白?」
「へっ?…あ、違うわい!わしじゃなくて…」
「そんなに言うなら飲んでやるよ。ほれぐすりなんて、あるわけない」
少年はカルピスを一気に口の中に含んだ。
「だ、だめじゃー!」
わしは少年に飛びつくと、下から唇を合わせ、少年の鼻をつまんでカルピスを吐き出させて、自分の体内に流し込んだ。
「んぐっ………ぷはっ!の、飲んじゃった、わし…」
カルピスの効果に怯えていると、なにやら少年の様子がおかしくなってきた。
「んっ…はっ、はあっ…なにこれ…すっごい…」
「お、お前、飲んだんか…?」
「吐き出す前に、ちょっと」
少年の目に火が灯っている。その目にじっと見つめられて、全く動けない。
そして急に、体の奥から何かが突き上げてくるような感覚に襲われた。
「ぐっ…わ、わしも…体が変じゃ…」
全身から汗が吹き出て、呼吸が荒くなる。ふと見ると、ペニスが勃起しておった。
欲しい。精液が、欲しくてたまらん。
こんな感覚、初めてじゃ。
「うっ…そ、そうか。これが、恋とやらなんじゃな…?」
「またなんかトンチンカンなこと言ってる」
「じゃって…子孫を残すために恋をするんじゃろ?つまり精液を欲するのが恋なんじゃろ?」
「違うと思うけど。だいたいこれ、ただの媚薬だろ」
「びやく…?なんじゃあそれ」
「あんた何にも知らないんだな。これはたぶん、体を興奮させて性行為をしたくさせる薬。惚れさせるとか、恋とか、関係ない」
「じゃあ、恋ってなんなんじゃぁ。それがわからんと、わし、仕事ができん…」
「俺に聞くな。自分で考えて」
「お前、知っとるんじゃろ?教えとくれよお」
少年の足にすがりつくと、少年は呆れた顔で答えた。
「その人のこと、つい考えてしまうとか。思い浮かべるとドキドキして胸が苦しくなるとか。自分のものにしたいと思うとか」
「それは、どうやったらなるもんなんじゃ?わしな、お前をそういう感じにさせたいんじゃ」
「んなこと言われても…。そのちょくちょく来る直接的な告白なんなの?」
「告白じゃないんじゃけど…」
カスミのことをボカして話すと、どうも紛らわしい言い方しかできん。
でも、カスミの願いを叶えて寿命を奪おうとしてることが知られたら、わし、本当にお清めされちゃうかもしれん。
「の、のう…ところでこの体、どうしたらいいんじゃ…?精液が欲しすぎて、おかしくなりそうじゃ…」
「おかしくなるって?」
「お前の精液が欲しいとかな、言っちゃいそうになるんじゃ」
「言っちゃってるじゃん」
「言っちゃってるわい。お前もあれじゃろ?性欲高まっとるんじゃろ?わしに精液飲ませてくれんか?」
「俺はエクソシストなんだぞ。悪魔とそんなこと、できるわけないだろ」
頭がぐるぐるして、上手く働かない。すぐそばにある少年の顔に、吸い寄せられるような感覚がする。
「目が……」
「は?目?」
「今のお前の目、熱を持っとるように見える」
「何?どうした急に」
「初めて見たときから、ずっとお前の目が気になってたんじゃ。普段冷たい目をしとったから、どういうときに熱くなるんじゃろうって思って」
「何、それ…」
少年の目が揺らいでいる。
「お前の目が、色んな表情をしとるとこをな、わし、見たくてな。お前のことばっかり心の中をちらついとるんじゃ」
あれ…わし、何言っとるんじゃろ。
カルピスのせいで、頭がぼんやりしとる…。
目の前もなんだかぼやっとしていて、ふと気づいたときには、目の前に少年のペニスがあった。
「飲めよ。欲しいんだろ」
「ほえ…?」
ゆっくりと少年を見上げる。
「今の俺は、どんな目をしてるんだ?」
「わからん…。でもきっと、わしの好きな目じゃあ…」
ふらふらとしながらペニスを口に含もうとしたとき、背後のドアがバンと開いた。
「上司さん!助けに来ましたよ」
「あれ…043ごう…?」
043号の声じゃ。なんでここにいるんじゃろう。
「仲間がいたか…逃がさん」
少年が足もとに落ちていた注射器を取り上げ、043号に向けた。
「ほら、上司さん。ぼけっとしてないで、行きますよ。俺、戦いとか無理ですから」
043号に引っ張られ、悪魔の世界の入り口に足をかける。
振り返ると、少年がこちらを見て立っていた。
「のう、少年…お前、名前はなんて言うんじゃ…?」
「……」
少年が何か答える前に、わしは043号に連れられて、人間界を後にした。
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