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淫魔vs天使(2)
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色々と衝撃的なことが起きたせいで、午後の授業に遅れてしまった。5時間目は数学だ。
ガラッと教室のドアを開けると、クラス全員の視線が集まって恥ずかしい。そして数学教師である天音先生に声をかけられた。
「あらー、遅刻だよ。早く席に……?」
なぜか先生は僕を見て固まった。
「先生?」
「あっ、えーと、吉野くん?」
「はい」
「君、放課後職員室に来てくれない?」
「ええっ」
授業ちょっと遅れたくらいで厳しいな…。
天音先生は、今年赴任した若い男の先生だ。若い先生というだけで学校では人気が出がちだけど、天音先生は本当にかっこいい。白くて綺麗な肌、笑うとくしゃっとなるぱっちりした目、少し癖のある柔らかそうな髪。まるで天使みたいだ…ここは天国ね…と言いながら倒れて救急車で運ばれた女子もいるとかいないとか。
性格も優しくて怒ることは滅多にないイメージだったけど…遅刻には厳しいんだな。こんなことならサボればよかった。
なんてったって僕は失恋したんだから。気持ち悪いとか言われて……はあ。
授業が終わって職員室に行くと、天音先生は僕を連れ出し、数学準備室で2人きりになった。
「あの…先生、何ですか?授業に遅れたことなら、僕十分反省して…」
「ちょっとごめんねー」
「へっ?」
先生に前髪をかきあげられた。そして先生の顔がどんどん近づいてきたかと思ったら、おでこ同士がこつんとぶつかった。
「せっ先生!ち、近…」
すぐ目の前に綺麗な顔があって、胸のドキドキが鳴り止まない。
「ふーん。ふんふん。なるほどね。なんか禍々しい気配がすると思ったら…」
しばらく経った後、先生はそう呟きながら、あっさり顔を離した。
「先生、いきなりどうしたんですか?なんか変ですよ…?」
「吉野くん!そのポケットの中にあるもの、没収するよ」
「……はい?」
「ほら、出してごらん?」
「えーと…」
先生は穏やかながら有無を言わさない目をしている。仕方なくほれぐすりを出した。
「これは何かな?」
「ほ、ほれぐすり…?」
「違うよ。これはただの媚薬だ。吉野くんにこれを渡したのは、淫魔というすごく悪い悪魔なんだよ。危ないから先生が没収…」
先生の手を反射的によけ、僕はなぜかほれぐすりを握りしめていた。
「あらー吉野くん?」
「僕…やっぱりどうしても……」
「吉野くんには好きな男の子がいるんだよね」
「えっ…?」
先生は微笑みながら僕の頭に手を乗せた。
「君の記憶を読み取らせてもらったよ。その恋を叶えるためにほれぐすりが欲しいんだ?」
「い、いや…」
「その薬じゃ恋は叶わないよ。さっきも言ったように、それはただの媚薬なんだ。それを飲ませても、碧くんがエッチな体になっちゃうだけだよ。君はそんなことを望んでるの?」
「う…」
「恋を叶えたいなら、先生が力になるよ。絶対君の恋を叶えられる」
「…先生は、何者なんですか?」
「吉野くんには、特別に教えてあげようかな」
そう言うと、先生の姿が光に包まれた。
そして気づいたら目の前に、白い翼を持つキラキラした美少年がいた。
「僕は実は天使なんだ。僕のお仕事は人間の恋を叶えること」
先生はさっと白いノートを取り出した。
「吉野くんにこのノートを貸してあげる。ここに自分の名前を書けば、吉野くんの好きな人と両思いになれるよ。だから、その媚薬は捨てなさいね?」
先生から受け取ったノートの表紙には「ラブノート」と書かれている。
「先生…僕、なにがなんだか…」
「状況を理解する必要はないよ。君がすべきなのは、媚薬を捨ててそのノートに名前を書くこと。それだけ」
「先生が天使だったって聞くと、1つだけはっきりすることがあるんです」
「…ん?なんの話?」
「天音先生、見た目はかっこいいし性格は優しいし…」
「いやあまあね」
「でも授業クソ下手じゃないですか」
「……え?」
「あれは天使だったからなんですね。本当の先生じゃないから、勉強もあまりできないんだなあ…」
「う、うるさいよ!天使が数学教えてるってだけでかなり褒められるべきことだと思うんだけど?!」
「いや、だからそう言ってるじゃないですか。天使だからつまんない授業しかできなくても仕方ないんだなあって…」
「な、なんなの君?どうして急に僕へのダメ出しを始めたの?」
「ちょりーっす!おふたりさん」
突然声が聞こえ、窓の方を見たら淫魔先輩がこちらに手を振っていた。…ここ、3階なんだけど。
「淫魔…!僕の前に姿をあらわすとはいい度胸だね」
先生はどこからか弓と矢を取り出し、淫魔先輩に向けて構えた。
淫魔先輩はそんなの全く気にしていないかのようにひらりと教室の中に入ってきた。
「ふーん、それが噂のラブノート?天使チャンもつまんないことするよねー」
「つまらない…?お前のその媚薬の方がよっぽどしょうもないよ」
「吉野っち、そんなノート使わない方がいいよ。必要なのは、セックス!これだけ。忘れたの?あの男の言葉」
「碧くんの言葉…?」
「男同士なんて気持ち悪いって言ってたじゃん?それならそのほれぐすりで男同士の良さをわからせてやらなきゃ。そんなノートで強制的に自分を好きにさせたって意味なくね?だいたいどこまで効果があるんだか」
淫魔先輩がにやにやしながらそう言うと、天音先生はむっとした顔をした。
「これは強制的に好きにさせるノートじゃない。恋を叶えるノートなんだ。効果は抜群。…だいたいそう言う君のそれは媚薬ですらなくて、君のせ」
「あちゃー、それは禁句っしょ。言っちゃダメなやつっしょ。いやもうプッチーンだわ。こうなったら勝負するしかなくね?」
「勝負…?」
「ほれぐすりとノート、どっちが強いか勝負すんの。吉野っちが使って満足した方の勝ち。どう?」
「いいよ。受けて立つよ」
「や、ちょ、待ってください」
勝手にどんどん進んでいく話についていけず、慌てて口を挟んだ。
「どーした吉野っち?」
「さっきから思ってたんですけどその吉野っちって……まあそれはいいや。僕、ほれぐすりもノートも使う気なんてありませんよ。勝負とか言われても」
「吉野くんは、使うよ」
天音先生が僕にぴしっと指を向けた。
「絶対に叶わない恋の相手。絶対に叶う恋のアイテム。使わない理由がない」
「でも…」
「結局、吉野っちはまだあいつのこと好きなんでしょ?」
今度は淫魔先輩に指を向けられた。
「ごちゃごちゃ考えんな。セックスは全てを解決する」
自信の満ちた様子でそう言い切られると、何も反論できない。
そのまま2人にほれぐすりとラブノートを押し付けられ、僕はやっと解放された。
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