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頑張れマオくん(1)
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「ねー、もういくの?」
悪魔の世界にも朝はやってくる。
地下牢の様子を見に行くため、ベッドを抜け出そうとしたら、眠そうな顔をしたユキに手をつかまれた。
「はい。朝ですよ」
「えー、僕ねむい…」
「あなたは寝てていいですから、俺は行きます」
「どこいくのー?」
「地下牢です。エクソシストから話を聞きに」
「えー…」
ユキはのそのそと布団から顔を出し、手を大きく広げた。
「ね、もっかい寝よ?」
「忙しいので」
「ねーえ!」
ユキはわざとらしくほっぺに空気を溜めた。
こうすれば俺が言うこと聞くと思ってるんだろうか?馬鹿みたいだ。
そのまま黙って見ていたら、ユキのほっぺから空気が漏れ出してきた。ぶーっという間抜けな音が聞こえてくる。
「あーもう、わかりました」
仕方なくユキの胸に飛びこむと、ユキは嬉しそうに抱きついてきた。
「えへへ。マオくん大好き」
ああ…何やってるんだろう、俺は。
大嫌いなはずのヤツに全力で甘えられて、拒否することもできない。
こんなことならやる気があるふりして地獄で働けばよかった。
「仲良くやってるみたいだな。安心したよ」
「はっ…?!」
突然お父さんの声が聞こえて、慌てて体を起こすと、目の前に立っていた。一体どうやって部屋に入ってきたんだろう。
「い、いや、これは…」
「ユキ、マオを借りてくよ」
「えーー」
ユキは口で抗議したものの、ベッドから出る気はないらしく、お父さんに引っ張られていく俺を追いかけてはこなかった。
廊下に出ると、お父さんは鏡を渡してきた。
「マオ、この鏡をよく見てみろ」
「え…?」
鏡をじっと見つめてみると、ひとりの悪魔が浮かび上がってきた。人間界で生活している姿が見える。
「誰ですか、これ」
「まあ誰なのかは置いといてさ、近いうちにこの悪魔が魔王城にやってくることになってるんだよ」
「はい…?」
「だからマオには、この悪魔が来たら、上手く俺のところまで誘導してほしいんだよね」
「誘導…ですか?なぜ…」
「理由はおいおいわかるよ。この鏡貸してあげるから、ちょくちょく見といてね。これは人間界でのリアルタイムの様子がうつされてるから」
「はあ…」
お父さんに鏡を押しつけられてしまった。
色々と意味がわからない。用事があるなら、そんな回りくどいことをしなくてもすぐに会いにいけばいいのに。
鏡にうつる悪魔を眺めながら、俺は地下牢へ向かった。
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