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11/22 いいふうふの日 303号室の場合
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side 良太
今日はイイ夫婦の日。
3年前の統計で約3290万組の夫婦が存在するってネットで読んだ。日本人約1億2700万人のうち、単純に6580万人が夫婦という計算だ。あとは子供か独身ってことになる。
珍しく真一が下のケーキ屋で、ホールケーキを買ってきた。♡11/22♡ ってプレート付きだ。
「何だこれ、よくもまあこんな恥ずかしいプレート頼めたな……」
ケーキを前に、そんなことを呟いた。俺も真一もここの住人だってバレていて、バイトの誠君に当然同居しているのも知られている。どんな顔してこんなの頼んだんだか……真一はシレっと、
「いいふうふの日ですよ? やっぱりラブラブな2人としてはケーキを食べさせあっこ位しないとね」
「……この前の11日といい、オマエそういうの好きだよなぁ」
「そりゃ、恋人と一緒に暮らしてるんですから。これ位してもいいでしょう」
「何かにつけて記念日にしたいって、女子な思考はどこからくるんだ……仕事場で仕入れるのか?」
つい思っていたことが口から出る。真一はキョトンとして、
「うちの研究所の女子は、そんなこと一切言わないですよ、結構理系女子は男っぽい人多いですからね」
「ふーん……」
テーブルのケーキを頬杖をついて見ていたら、真一はいつものエプロンを付けて食べる準備を始めた。
至極ご機嫌な様子でワインをテーブルに乗せ、グラスに注ぐ。そして目の前のケーキにローソクまで立て始めた。10本のローソクは大小さまざまでそしてカラフルだ。そして部屋の電気まで消しやがった。
「……? この雰囲気。誕生日っぽいな、懐かしいわ」
「実は。誕生日ですよ、俺の」
「……え!?」
「だから。俺は今日28歳になりました、一緒にお祝いしてくださいますか? 良太君」
揺らめくロウソクの向こうで、ニッコリ微笑む真一はほんのり顔が赤く見える。
「……知らなかった、オマエ今日が誕生日だったのか」
「流石にわざわざ『今日は俺の誕生日♪ 良太君お祝いしてぇっ』て言えなかったですからね……」
「言ってくれれば俺がケーキ用意してやったのに」
「いいんですよ。一緒にこのケーキ食べてくれるだけで」
そう言うと真一はワイングラスをそっと俺に差し出す、それを俺は受け取って
「誕生日おめでとう、真一。プレゼント無くてごめん……」と言いながらワイングラスを傾けた、真一はそのグラスに、自分のグラスを重ね音を鳴らす。
「ありがとう、良太君。……ね、俺にケーキ食べさせてくれますか?」
しおらしくお願いしてくるから俺は頷いた。
「そうだ、一緒にケーキカットしますか」
「ケーキ入刀ってか? そりゃ誕生日じゃなくて結婚式だろ」
笑ってそう言うと、真一はケーキに視線を送りながら、
「……世の中には、おおやけに結婚っていうことの出来ない夫婦みたいな人たちがどれだけ居るんでしょうね」と、つぶやくように言う、
「さあな。結構居るんじゃないか? そういう統計はきっと取らないだろうけどね」
「……」真一は俺の言葉に無言で、じいっとローソクを見つめている。
しんみりした空気になり、その空気を変えようと俺はケーキをフォークで一口位にすくって真一の口元へ運んだ。
「別にさ。大っぴらに言わなくてもいいんじゃないか? 制度的なものはこれから変わるだろうしな。ほら、ローソク消してから、食えよ」
「ふふ、いただきます」
ローソクを吹き消し電気を付けて、嬉しそうにケーキを頬張る真一は、一瞬子供みたいに見えた。何故だかは分からないが。
「プレゼント、明日でもいい? 何が欲しい?」
「明日じゃなくて、今晩。欲しいです」
「だってもう……」 時間ないじゃないか……。って言おうとしたら真一の目の端がキラリと光って
「今日はね、俺の言う事なんでも聞いてほしいな~って。ふふふ、新しい採取器具をね、入手したんです。早速それを……」
「……使いたい?」
「え、そう思ってたんですが……」
「照れなくても、今日は採取なしで言う事なんでも聞いてやるよ」
「……いいんですか?」
「まぁ、年に一回くらいは、な」
そう言いながら、ケーキのクリームを人差し指ですくって真一の口元へ差し出す。
「ふふ、じゃあ。遠慮なく頂きます」
ことさら嬉しそうにそう答え、真一はクリームごと俺を頬張り始める。
end
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