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サポートミュージシャン -2-
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「……そんで気が付くと朝になってたし、その子もいなくなっちゃってたし、連絡先貰い損ねたんすよねぇ。惜しいことしちゃって」
「え、じゃあ少しも手付けてないの?」
「も~ぉね、それすら記憶にない!」
「それお前、酔っ払いすぎなんだよ。自分は酒を抑えといて流れ作れよ」
「流れって?」
「だから、ホテルなり部屋なり連れてく流れ」
「あぁ~、まぁそうなんですけどねぇ。お酒も同じくらい惜しいから」
「ダメだこりゃ」
安居酒屋でビール瓶片手に、pmpの2人と持田は、汚い話題に汚い笑いで酒を進めていた。
「最近お二人は家も離れたんでしょ?いまは結構好き放題なんじゃないんですか」
「好き放題したいところだけど、相手がね」
前島も酒が回っていい気分になっていたところ、持田の次の一言で少し酔いが醒めた。
「木田さんの方はどうなんです?最近ちょっと付き合い悪いし、そっちに割かれてる感じですか?」
木田も同じらしく、一瞬ギクッとしながら気の抜けた笑みを浮かべる持田の方を向いた。
「俺は……」
木田は少しひきつり気味にニヤリと笑った。
「……ぼちぼちだよ」
「え~~~~~~」
笑いながら木田の肩をバシバシと叩く持田を見て、事なきを得たと前島は胸を撫で下ろした。言わずとも隠さない、というのもなかなか難しいものだ。
ひとまず店を出たのは、それから瓶を10本ほど空けたあとの話だ。
「さて、次どのへん行きましょっか」
「俺は、ちょっとこれで」
フラフラと辺りの飲み屋を見回す持田をよそに、木田はジャケットに腕を通し、そのまま駅の方面へと足を向けた。
「ほ~ぉ?おつとめご苦労様です。ダメそうだったら俺に紹介してくださいねー」
「あぁ?しねぇよ」
ほろ酔い程度で解放された木田はケラケラと笑いながら背中を向けて、手を振り歩いていった。
「俺も今日は帰るかなぁ」
「前島さんも?マジか~、あ~ビール買って帰ろ」
「ははは、じゃあ俺、電車あっちだから」
「あぁ、俺もそっちですよ。一緒に行きましょ」
帰り道へと歩を進めながら持田は思い出したように口を開いた。
「でも今日も教えてくれなかったなぁ、木田さんの男のこと」
「まーそうそう言うもんでも……」
前島は笑いかけて止まった、頭の働きも一瞬止まった。いつだったか、少し前にもこうした理解不能な文脈が、急に飛びこんできたことがあったような。
「……おとこ?」
前島は恐る恐る持田が呟いた言葉を繰り返した。その反応を待ってましたとばかりに、先を歩いていた持田が振りむいてニヤッと笑った。
「はい、男。なんでしょ?」
持田の悪戯小僧のような笑顔と言葉を見て、前島の頭では「言わずとも隠さない」の言葉が繰り返されぐるぐると回り、どうも悪酔いしてきた気分になった。
自分が言うべき言葉が見つからず、なんなら全力で駅まで逃げ込もうかとさえ思った時に、持田がアハハハと笑い声を上げた。
「困らせちゃってすいません。前島さんももう知ってるのかなーって思って試しに言ってみただけなんで。でもそっかぁ、大体周りの人は知ってるんですかね」
「いやいやいや……なにバカなこと……」
「お相手の方はむーろー」
「分かった!分かったからそれ以上言うな!」
相手の方まで割れてるのならもはや誤魔化しきれないと、前島は降参した。
「ったく、どこで得るんだよそういう情報……」
「どうもそういうのには目ざといもんで、すみません」
確かに、木田も分かりやすいと言えば分かりやすいが、よく相手が男だということに発想を繋げられたものだ。
「まぁ、俺たちの方でもね、その、ばれたら別に隠さないっていうことは言ってるんだけどさ」
「ほ~ぉ」
「あんまり大っぴらに言いふらしたり、そのことであいつをからかうとか、そういうのは頼むからやめてくれな?」
「かしこまりました」
持田はわざわざ前島の正面に向いてお辞儀をしたが、顔はニヤニヤとしている。
「でもね~前島さん」
続く言葉を、前島はなんだか聞きたくない気がしていた。
「俺だってねぇ、諦めてたんですよ。木田さんは絶対ノンケだろうし、誘っても無理だろうって」
「……は?」
ある程度の警戒を以てしても、持田の言葉はまたも前島の理解に追い付かないものであった。
「それがまさかコロッとその道に行っちゃうなんてねぇ、友達程度として割り切ってた俺としては不服じゃないですか」
「……」
「で、木田さん結構女癖も悪かったでしょ?だったら男癖の方もワンチャンあってもいいんじゃないかな~って」
「……いや、いやいや待って、何言ってんの?」
「あぁ、一応ちゃんと説明しとくと、野郎もイケるんすわ俺。木田さんちょっと好みだったんですよね~」
「……マジで?」
「大マジっす。まっそんなわけで、一発くらいはこぎつけてえなーって今は思ってるんですわ」
「お前、それは」
「あ、木田さんにはくれぐれも内緒ってことで」
へへへへへ~と笑い声をあげながらズカズカと持田は歩いていく。前島はそれをもう追える気力も無かったが、ただ一つ、言わずにはいられない言葉をどうにか吐き出した。
「……それを俺に話してどうする!!!」
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