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マスターが着替えて戻って来た時、
TRICKには丁度2人しかいなかったから
バーカウンターで話をすることにした。
マスターと隣に並んで座る。
重たいのか軽いのか分からない沈黙がバー全体に流れる。
「昨日、誰といたの?仕事終わってから。」
「えっ」
突然の質問に、戸惑いを隠せなかった。
「ごめんね。男の人に抱きついているの見ちゃったから」
「ええっと、躓いたんですよ。あの男性は知人です。」
「飛び込んでいるように見えたけど、」
この人が何を考えているのか分からない。
こちらを見ているようで見ていないような、
そんな眼差しだ。
「もしかして、恋人とか?」
「何言ってるんですか、だから僕、男「あの人、結婚してるよね、一回奥様とここに来たと思うけど」」
言葉を遮られて、戸惑いが更に増す。
彼の洞察力は本当にすごい。
鋭い瞳は全ての情報を見逃さない。
マスターは、隆平さんが僕の恋人だと確信しているようだ。
「恋人ですよ。彼は結婚しています。」
どうにでもなれと堪忍したように言った僕。
「不倫はやめときなよ。」
僕が1番恐れた言葉だった。
誰からも言われたくない言葉だった。
言われたら、否定できないことは嫌という程分かっていたから。
未熟な僕だから、
不倫は辞めたほうがいいと分かったのは、一度踏み込んでしまってからだった。
手遅れだった。
でも、1番恐れたのは、マスターに軽蔑される事だった。
怖かったのだ。
今、この人が僕をどんな風に見ているのかが、1番に。
不意に、僕の頭でぽんとマスターの手が弾んだ。
そして、ニヒルに笑う。
隆平さんとは違う笑顔だと思った。
途端に泣きたくなった。
理由はいくつもあげられる。
マスターに不倫がバレてしまったこと。
不倫を否定されたこと。
マスターの笑顔に体が熱くなったこと。
そして、
この人だったら、
この人に抱かれるならどんなに良いだろうと考えてしまったこと。
「泣くなよ。」
「ごめっなさっ、、」
「嘘だよ。やめたほうがいいって言ったの。」
一生懸命、首を左右に振る僕の頭をまた、マスターの手が2度3度弾む。
「子供じゃないから、こんな事では泣き止まないかな」
先ほどとは違い困ったように笑う。
泣き止んでから全てを話そうと思えた。
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