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朝食の後
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大量のパンを持ってきた僕を見て、Aは驚いていた。それもそうだろう。僕はトレー2つにこんもりパンを積んでいたのだ。
『おい、お前そんなに食べれんのかぁ?残しやがったら許さねぇぞ!!』
「ふんっ、楽勝だよ!!育ち盛りだからね!!ほらほらパソコン閉まって、食べよ!」
テーブルにパンを広げ、ジャムやバターを並べる。僕がバケットにブルーベリージャムを塗っていると、前の方から『それにしたって多い…』とかブツブツ聞こえてきたけど気にせず食べた。
Aは朝はあまり食べないのか、一個しか食べなかった。
僕たちはパン屋を出た後アパートには戻らず、近くを歩くことにした。僕が少し記憶喪失だかららしい。確かに何で傷だらけなのか思い出せないままだけど、それ以外の記憶はちゃんとある。
そこだけが抜け落ちてて……
何故だか、酷く思い出したくない。
『ここでお前を拾った。何か思い出すか?』
酒屋の前で止まり、バタークリーム色のレンガ壁をジッと見つめてみる。だけど只々痛い感触しか思い出せず首を振った。
「…わかんないや。それよりさ、Aのこと教えてよ。まだ僕名前と家しか知らないよ」
Aを覗き込みながら伺うも、反応は無かった。サングラスの奥の瞳は僕を写してなくて、ずっと少し血の滲んだレンガ壁を凝視していた。
Aは地面に膝をつき、その汚れた部分を撫でた。
『……お前の血か。まるで殺す勢いだな』
「………」
Aは本当にどうしてこんなに気がけてくれるんだろう。他人なのに、どうでもいい筈なのに……
そんなに世話されたら、つい甘えてしまうじゃないか……
『…どうした?傷が痛むか?』
「違うよ。ちょっと感傷に浸ってただけ〜」
にこっと微笑みAの腕を引っ張る。もうここに居ても仕方がないし、早く移動したい。
太陽も隠れてしまって冷たい風が通った。何だか気分が悪くなってきて、冷や汗が頬を伝う。
あー……ダメだ。目眩がする……
「立って……られない…」
ぐらっと視界が回り、地面へと一直線に倒れる。けれど間一髪で地面に着く前に、逞しい胸の中に引き寄せられていた。
『……顔色が良くねぇ。一回戻るぞ』
その瞬間僕の体はふわっと宙に浮き、Aの肩の辺りに右頬がふにっと当たった。Aは平然と僕を姫抱っこして、道無き道をくねくねと曲がったり飛び越しながらアパートへと戻った。
階段を上がり、ドアを開けようと手を伸ばしたら、足元から甘えた声が聞こえてきた。見るとそこには、黒い毛並みを柔らかく梳いた猫が見上げていた。
うっわぁ可愛い。上品な猫ちゃんだなあ…
きゅるんとした瞳に小さめな体。よく見たら首に手紙をぶら下げていた。Aはその子猫を僕の腹にポイっと乗せて中へ入った。
その間、子猫はきゅっと僕の服を掴んで丸くなっていて、なんだろ……この湧き上がる高揚…
「んんん、かっわ……ッ」
その時にはすっかり体調も戻っていて、さっきまでの目眩も頭痛も消えていた。ただ、次に腹痛が襲ってきた。それをAに訴えると、自業自得と嘲笑われ、歯ぎしりが部屋に響いた。
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