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手紙
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「ねぇねぇ、その手紙誰から〜?」
ソファーでゴロゴロしながら聞くが、Aはお前には関係ないと言う。
まあ実際教えられたところで分からないけどさ
「恋人、いたんだ」
子猫を撫でながら呟く。
まあ無愛想で乱暴な男だけど、190はある高身長だし、スポーツマン顔負けの筋肉してるし、女は放っておかないかも。
……何も言わないし!!
アパートに戻ってからずっとAは手紙から目を離さなかった。ジッと見つめては紙に何かを書いている。
その書いた紙を折り曲げ封筒に入れたら、子猫の首にかけた。子猫は「にゃあっ」と可愛く鳴いて部屋から出て行った。
「……おりこう〜」
きっと差出人の所へ持っていくのだろう。猫ってそんな頭良かったっけぇ?
ベランダに出て子猫を探す。さっき出て行ったばかりなのにいくら目を凝らしても見つけられなかった。
「ねぇA……」
振り返るとポンポンとソファーを叩いていた。促されるままそこに座ると、包帯を解いていった。
「A、僕はきみのこと、もっと知りたいと思ってる……」
ポツリと零す。Aは僕の手を取り腕の包帯を変えていく。切り傷は瘡蓋になっていて痛みは無いが、やはり痣が痛む。内出血しているのか赤黒くなっていた。
『俺のことが知りたい?本気で言ってんのか?』
ギロッと睨まれた。その瞬間ギクッと胸が痛み、鼻が痛んだ。
その目は威圧感だけじゃなく、何となく……不信感や嫌悪感を含んでる気がした。グッと堪えていないと泣いてしまう所だった。
そんな僕の頭に手を置き、落ち着かせるように優しく撫でられる。その時初めて自分の息が乱れていることに気づいた。
「…ッん、は……はぁ」
深呼吸をするよう言われ、それに意識を集中させる。Aはそんな僕を見てどう思っただろう。今、どんな顔をしているのだろう。
『……俺のことより、てめぇの事を思い出せ。それが最重要だ。他のことは気にするな』
「……僕とAは、初めましてだよね?なんでそんな……気にかけてくれるの?」
縋るように肩を掴む。けれどAはそれ以上何も言ってはくれなかった。
だから僕も何も言わず、黙って治療が終わるのを待って、その後ベッドにもぐったのだった。
「これじゃあ……まるでふて寝の子どもだ」
まだ日は高いのに、僕の声は部屋の中で寂しく消えていった。
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