アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
決心
-
「A、A……!!どこ行って…」
『喋るんじゃねえ、早死にしたくねぇならな』
ふわっと体を抱き上げられ、一気に体が宙に浮く。体が揺れるたびにズキッと傷が痛み、声を必死に殺しているとAが立ち止まった。
てっきり酒屋に行くんだと思っていたけど、Aに連れられた場所は逆方向の一軒家だった。
やけにレトロチックで立派な家。庭には白くふわふわな子犬が寝ていた。
「………」
なんだろう……この場所、見覚えがある
Aは無遠慮にズカズカと中へ入り、リビングの扉を開けた。そこには几帳面に金髪をセットした中年男と、10歳くらいの幼い男の子が食事をしていた。
2人はいきなり現れた僕たちに驚くことなく快く向かい入れてくれた。すぐに僕の容態を察して医者を呼んでくれたり、ふかふかなベッドや着替えも用意してくれた。
僕は頭が追いつかずされるがままになっていて、医者の治療が終わる頃にはすっかり疲れ果てていた。
「…はあ、ッん、うぅ」
鎮痛薬が効いてくるまで暫くかかるらしい。左肩が燃えるように熱い。部屋を見渡すけれどAの姿はなく、1人ポツンと横になっていた。
僕はどうしていきなり撃たれたのだろう。何も思い当たることがない………
「もしかしたら……」
もしかしたら僕は、1億ドルの懸賞首で世界中から命を狙われている憐れな男……というダーク主人公なのかも。
それなら名前を聞いて間髪入れずに撃たれたのも納得がいく。
……けど
すごく、怖かった
冗談抜きで本当に人生終わるかと思った。
まだ30年も生きてないのに死にたくない。
痛い思いもしたくないし、追われる身なんてもっと生きた心地がしない。
静かな寝室で寝ていると、ノック音もなしに扉が蹴り開けられた。驚いてるとベシッと濡れたタオルを額に押し付けられた。
「うわっ!!」
Aは可笑しそうに笑いながらベッドに座ってきた。包帯の上をゆっくり撫で、そのタオルで汗を拭いてくれる。
「ちょ、痛い……傷にさわらないで」
優しく撫でられるだけで痛みがはしる。鎮痛剤が効いてきてはいるけど、少し動くだけでも涙が出そうになるのだ。
『おい、今日のこと何か思い当たる節はねぇのか?』
「えぇ〜……まだ何一つ思い出せないや。思い出そうとするとひどく頭が痛むんだ。まるで記憶に鍵をかけてるみたいに…」
『………』
Aは何も言わず、僕の頬を撫でた。サングラスの奥の瞳は同情なんかじゃなく、眉間にしわを寄せた強い意志で、まるで俺が支えてやると言われているようだった。
僕も恐る恐るAの頬に両手を伸ばした。
「…A、僕は…僕のことを知りたい。訳わからない状態で殺されたくなんかない。ちゃんと自分のことを理解して……死にたい」
涙がにじむが、グッと堪えて震える手をAから離した。
その瞬間、Aは僕の手を引き抱き寄せてきた。優しく傷が痛まないように腰を抱き、首筋を撫でられ、吐息が耳にかかる。
当然、僕はカッチコチに固まってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 7