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出会い
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足が痛い。
頭が痛い。
手をやったそこは熱を持ち、ぬるりと赤い色で袖を染めた。
「ぃ…」
声も出ない。
僕は、このままここで死んでいくのだろうか。
ゆっくりと目を閉じる。暗闇は嫌いだったけれど、眠ってしまえば今度こそいつか見たような天使が迎えに来てくれるかもしれない。
『お前に天使なんて不釣り合いだ』
いやというほど目に焼き付けてきた人の声が思い出され、動かないはずの体がわずかに震えた。その震えが余計に傷んだ体にしみる。ああ、やはり天使なんて迎えに来てくれるはずがない。穏やかな眠りなどあるはずもないし僕にはこうやってみじめにはいつくばって死ぬのが似合っているんだ。
今度こそきつく目を閉じる。
せめて、あの人のことを思い出しながら最後の眠りにつきたい。
自分を痛めつけ、ここに置き去りにしたあの男たちの幻聴に悩まされながら死ぬよりも、それはずっと良い死に方に思えた。
足も頭も手も腹も、無理やりいれられたところも今までの中で一番痛いと思うのに、それだけでは死ぬには足りない気がした。本当に僕が死ぬためには致死量に至る痛みを心臓に与えなければならない。
優しく笑うあの人をおもいだす。
顔はぼやけている。声は自分に向けられたものではないからこそ優しい。
急に体の痛みが遠のいたような幻覚に襲われた。それはきっとこの胸の痛みの方が強いからだろう。
「しぬんだ…」
ぽつりとつぶやいた言葉は誰もいない空間に消えた。
最後まであの人に満ちた人生は、苦しいけれど楽しいものだった気がして、僕はこれまでにないくらい穏やかな気持ちで力を抜いた。
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