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計算型のタラシにはご用心!
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朝目が覚めると全てがリセットされていたらどんなに幸せだろう。
そんなことを夢見ながら、俺は着慣れない服に袖を通していく。
「ママ嬉しいわぁ。夏君が女の子に目覚めてくれて…❤︎」
食事中にうっとりと俺のセーラー服姿を眺めながら母が言う。その爆弾発言に咽せそうになり、うっかりレオ先輩から借りたセーラー服を汚しそうになった。
いや、いっそこんな服汚してやりたい。
むしろズタボロにして返したら、さすがに幻滅して女装を辞めさせてくれるかもしれない!!
俺はゴクリと唾を飲み、上品で高価そうな生地に海老チリソースを近づけていく。
だが、もう少しの所で俺の脳裏に警告が鳴り響いた。
『もしそれを汚してしまったら……レオ先輩、何をするかわからないぞ』
「……っ!!」
確かに……よく考えたらそうだな
よく思いとどまった自分!!えらい!!けど現状何も変わってない!!!
はあぁ……と肩を落としていると、母が不思議そうに目をパチクリ瞬かせた。
朝食を済ませ、恐る恐る外に出る。やはりこの姿はヤバイだろ……さすがに近所の人の目が怖い。
キョロキョロ警戒していると、家の前でサライ先輩が立っていて手を振ってきた。
「おはよぉ夏李君。朝から可愛い格好しちゃって……誘ってるのかな❤︎」
「うああビックリした!!何でいるんですかサライ先輩ッ……あと朝からセクハラやめてください」
サライ先輩は相変わらずの甘い笑顔で側までより、有無を言わせず俺を家の中へと引きずっていく。
俺の部屋まで来るとウィッグを素早く装着させ、メイク道具を手に取った。
どうやら俺のメイクの為だけにわざわざ来てくれたらしい。
「あ、あの先輩。いつから家の前で待ってたんですか?」
真剣な顔で俺にメイクをしていく先輩。まだ4月前半でちょっと寒いのに……
「うん?そんなに待ってないから気にしなくていいよ〜。あ、まだ目ぇ閉じててね」
「ダメですよ!風邪引いたら大変ですし、わざわざ来てくれてるのに……これからは部屋で待っててください!」
サライ先輩は「いいのに〜」と言っていたが、根負けしたみたいで頷いてくれた。
そして2人で歩いて大学まで向かう。時々すれ違う人が俺たちを見てきたり、何か話しているのを見かけた。
その度に男だとバレたのか内心焦りまくり、生きた心地がしなかった。
けどその人達の視線は俺にというより、サライ先輩に注がれているんだと少しして気づいた。
そうだよなぁ……男から見ても色っぽくて格好いいもん。
少しタレ目で二重。柔らかそうな髪はゆるくセットされていてオシャレだ。
並んで歩いてる俺は全然釣り合っていなくて……っていうか女装してる男で、色々と役不足だ。
「あっ夏李君、昨日は猛ダッシュで帰って行っちゃったけど大丈夫だったぁ? 変な男に襲われたりしなかった?」
唯一この思考回路だけ残念なんだよなぁ……
「大丈夫ですよ……二次元じゃあるまいし。そういうのは実際現実では起こらないもんなんです」
「え〜そうかなぁ。夏李君けっこう可愛いよ?」
うわぁ…この計算型のタラシ!!!
それ言われたら大概の人騙されるぞ!!
「あ、あ、ありがとうございます。でも自分の事は自分が一番わかっているので……ははは」
我ながら悲しい……
そりゃ毎日毎日自分の顔を鏡で見てるからな。心得ておりますよ。
苦笑いを浮かべていると、サライ先輩が不意に髪を撫でてきて、ちゅっと額にキスをしてきた。
「ほんとうに可愛いのに。信じてくれないの?」
そのまま手を握られ、至近距離のままいつもの笑顔を向けられた。
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