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第72場 ハルの家
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【第72場 ハルの家】
(玄関)
ガチャ
ハル:「おー!来たか!入れ入れ!」
エレア:「じゃーす。」
つくも:「お邪魔します。」
ボスッ
エレア:「相変わらず女の匂いはなし、と。
まーイカ臭くねーだけましか。」
ハル:「お前はまた!
それになんだ?!頼みがあるから来たのにその態度か?」
ガバッ
エレア:「それ!
あのさー、11月から教習所通いたいから、保護者のとこの代筆してくんね?俺の字で書いたら、汚くてバレそうだから。
親父に言ったら受験生がうんたらかんたら~って始まるから。」
ハル:「教習所ってお前な…。
お前、国公立受けるならセンター1月2週目くらいだろ?勉強どうする気だ!」
エレア:「あー!ハル兄まで説教しないでくれよな。ほい、これ10月の模試の結果。
ホストで2時帰宅しててもこんだけ取れたから、教習所くらい余裕だって。」
ハル:「どれどれ。国立は…東京医科歯科大歯学部A判定。私立は東京歯科大S判定、日本歯科大S判定か。
なるほど。勉強はしてるようだが、なんで、いきなり歯学部ばっかりなんだ?
それにあれだけ国公立にこだわってたのに、私立が多いじゃないか。」
エレア:「それはホストやって金の大事さ知って、教師や医者より歯医者の方がもうかるって聞いたから。
私立選んだのは、ホストやったおかげで金も結構貯まったし、大学で普通のバイトすればやっていけそうだから。」
ハル:「まぁ、やりたいことが決まったなら、勉強にも身は入るだろ。」
エレア:「だから頼む!代筆して!」
ハル:「オレはお前の親父さんとも仲良いの忘れてないか?」
エレア:「そこをなんとか!」
ハル:「わかったよ。」
エレア:「ほい、じゃあ、ここのとこね。」
ハル:「印鑑は?」
エレア:「買ってある、はい。」
ハル:「はぁ、まぁ手回しのいいことで。」
エレア:「サンキュー。じゃ俺帰るわ。」
ハル:「飯食って行かないのか?」
エレア:「わりーんだけど、たぶんかおが作って待ってるから。んじゃ。」
ハル:「おい!」
エレア:「忘れてた!はい、こっちがつくもの分の書類な。さらばだ!」
バタン
ハル:「なんだったんだよ。あいつは。」
つくも:「ははっ(笑)相変わらずコントすね。俺、一言も喋る隙が無かった(笑)」
ハル:「笑い事じゃあないぞ。」
つくも:「いや、和むんでそのままでいてください(笑)」
ハル:「で?つくもも教習所通いたいのか?」
つくも:うーん…」
ハル:「歯切れが悪いな。やっぱりエレアと通うのはまだ抵抗あるか?」
つくも:「それは、本当はこんな形じゃなく、ちゃんと報告しようと思ってたんですど。
自分の中でケジメつけるための行動みたいなことして、ケジメつけられたんで。
もうエレアのことは、出会った頃くらいの普通の親友感覚になりました。」
ハル:「そうか、よかったな。
自分でケジメつけて偉かったな。」
わしゃわしゃ
つくも:「だから子どもじゃないっす。」
ハル:「悪い悪い。可愛くて、ついな。
で教習所行かない理由は勉強か?」
つくも:「いや、勉強も問題ないです。
あ、これ俺の模試の結果です。」
ハル:「えーっと、国立が東大理ⅢがB判定、一橋大学の経済S判定、私立が慶応の経済・商学部ともにS判定、上智の経済S判定。すごい優秀だな。
行きたい方向が経済に決まったのか?」
つくも:「将来起業したいんで。
正直たぶんハルさんの想像の遥か上の金額持ってるから、今すぐでもできるけど、未成年なのと日本は学歴で判断されること多いんで、ちゃんと経済学ぶのもいいかなって。」
ハル:「東大理Ⅲは経済に関係ないぞ?」
つくも:「あー………。それは単に自分の実力どれくらいか知りたかっただけです。」
はる:「そうか。エレアの問題が解決して、勉強も問題なし、その口ぶりだと金も問題なさそうだな。で、免許取らない理由は他にあるのか?学校が禁止してるからか?」
つくも:「学校は関係ないです。ただ保護者のことがちょっと複雑で…。」
エレア:「ご両親が反対してるのか?」
つくも:「そっか、ハルさんには説明してませんでしたね。
俺はばーちゃんが日本人で、じーちゃんが駐日アメリカ軍だったんです。その娘が俺の母親でつまりハーフ。俺の父親はアメリカ人で、今は2人ともアメリカに住んでます。だから俺は3/4アメリカ人で、見た目がこんな感じです。
で、保護者の件は、ばーちゃんはもう死んでるんで、そのばーちゃんの弟が一応俺の保護者ってことになってます。
でもそのジーサン含め日本の親戚は、ばーちゃんがアメリカ人と結婚したことに猛反対してたんで、俺にも結構敵意があるみたいで、俺とか両親との折り合いが悪いんです。
…って俺、日本語の説明苦手なんですけど、意味伝わってますか?」
ハル:「あぁ、十分わかりやすいよ。」
つくも:「じゃあ、もう少し続けますね。
そんなんで、そのジーサンとは必要最低限しか合いません。法律的に必要な時…って言ってもほとんど無いですけど。
母親の体が弱いんで、親が日本に来ることは滅多にないです。
学校とかで保護者の名前が必要な時は、アメリカの両親からPDFのメールでもらうとかしてます。学校も事情を知ってるんで、それで免除してもらってます。
問題なのは保護者とか身元保証人の、身分証のコピーとかを本人が出さないといけないときですね。
昔、一回勝手に名前だけ書いただけで、ジーサンと俺の親ですげーバトルになったんで、勝手に代筆とかは無理ですね。
ジーサンとは高校の入学書類提出するときに会ったきりです。」
ハル:「複雑なんだな…。
でも携帯の契約とか機種変更するときみたいに、その本人が提出するコピーが必要な場合はどうしてたんだ?」
つくも:「ケータイは最初は飛ばし使ってました。今は、他人の名義借りてやってます。機種変とかはその人にやってもらわなきゃなんで面倒ですけど、一応問題ないです。」
ハル:「そうか…。
じゃあ、次は大学の入学時に、そのジーサンに会うことになるのか。」
つくも:「それが一番頭痛いです。
ジーサンの孫が俺と同い年で、あんま勉強できないみたいなんで、俺が開成行くのもすげー嫌味言われて、書類もらうのも大変だったんすよね。
だから、一橋とか慶応行くなんて言ったら、また一揉めしますね。大学に入っても二年間は未成年だから、絡みはあるし…。
あー考えたくねー。」
ハル:「他人の名義借りなんて危ない真似や、そんな辛い思いするくらいなら、法定代理人とか考えなかったのか?」
つくも:「法定代理人ってなんですか?」
ハル:「例えば本人が未成年者の場合に、本人に代わって法律行為を行うことができる人間のことだ。
一般的なのは親権者だが、後見人って存在もある。
弁護士に手続きしてもらうんだが、家庭裁判所に申請すれば認められる制度だ。」
つくも:「へー。そんなの初めて知りました。」
ハル:「だから、つくもは顔広そうだし、信頼できる大人に法定代理人になってもらったらどうだ?」
つくも:「信頼できる大人ねぇ…。
そんな大人はいないですね。」
ハル:「さっき言ってた、携帯の名義貸してくれる人とかはどうなんだ?」
つくも:「それは、俺が『手数料』として毎月その人に金払ってるんで。
金さえ払えば基本なんでもやってくれるんで、不都合はないですけど、所詮金の繋がりなんで信頼なんてないです。」
ハル:「他に大人の知り合いはいないのか?」
つくも:「『知り合い』ならたくさんいますよ。でも絶対、金か体か情報を要求してくるんで、信頼はできないですね。
大人はみんな汚いって基本思ってます。」
ハル:「金か体かって…。ずびっ。」
つくも:「は?なんでここでハルさん泣くんですか?!哀れみとかやめて下さいよ?」
ハル:「ずびっ。違う!お前の代わりに泣いてるんだ!
お前、今、すごい泣きそうな顔してるの自覚してるか?」
つくも:「え?」
ハル:「そんなに1人で孤独を抱えようとするな!
よし!決めた!!!」
つくも:「なんですか?いきなり大声出して。」
ハル:「俺はつくもに信頼してもらえる大人になる!法定代理人の件はまだ置いといたとしても、お前がなんかあったとき、いや、何もなくても頼れる大人を目指す!」
つくも:「ハルさん…。
お気持ちだけ貰っときます。俺そんなに弱くないんで。」
ハル:「それだ!
そういう言い方をしなくて済むような、安心できる家みたいな存在になるぞ!
もちろんつくもは何もしなくていい!
俺が努力する!
そうと決まったらメシだ!」
つくも:「え?は?なんでメシ?」
ハル:「日本には『同じ釜の飯を食った仲』って言葉がある!同じ釜の飯を食ったら、苦楽を共にできるんだ!
だからメシだ!そうと決まったら行くぞ!」
つくも:「え?どこに?」
ハル:「決まってるだろ!
庶民の味方、イオンに買い出しだ!」
つくも:「ぶっ(笑)熱いすね!」
ハル:「当たり前だ!ほら早く行くぞ!」
つくも:「え、あ、待ってくださいよー。」
(すごい勢いで買い出しに向かうハルと、慌てて追いかけるつくもであった。)
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