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第85場 つくもの家
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【第85場 つくものマンション】
(12月1日)
(つくもとエレアが会った日)
(ハルが瞳と会った後の帰り道)
ハル:「22時か。結構遅くなったな。
今から行くのは非常識かとも思うが、夜の方がいる確率高いよな。
よし!ダメ元で!えっと703と。」
♪ピロリロリン~ピロリロリン~
ハル:「やっぱりいないか。」
♪ピロリロ
つくも:「『はい』
ハル:「あ、俺だ。ハルだ。
少し話せないか?」
つくも:『今、開けます』
ピッ
ガーッ
(つくもの部屋の前)
ハル:「はー、なんか緊張するな。」
♪ピンポーン
ガチャ
つくも:「あんま綺麗な部屋じゃないけど、どうぞ。」
ハル:「お邪魔します。」
つくも:「コーヒー、ブラックですか?
やっぱ甘口なんで、砂糖入れます?」
ハル:「いや、コーヒーはブラックで。」
コン
つくも:「どうぞ。」
ハル:「ワンルームとは言え広い部屋だな。
親御さんが借りてくれてるのか?
エレアは自分で払ってるかもって言ってたが。」
つくも:「いや、家賃は親に出してもらってます。親は俺がホストで稼いだこと知らないんで。大学の費用とかは自分で出すから、FXで稼いだって説明しようと思ってます。実際自分もやってるし、FXは親もやってるんで。」
ハル:「高校生でFXって。」
つくも:「海外じゃ珍しくないですよ。」
ハル:「まぁ、日本でも中学生がやってて話題になったくらいだしな。」
つくも:「すいません。」
ハル:「え?いきなりどうした?」
つくも:「いや、ずっと連絡貰ってたのに返せなくて。」
ハル:「ああ、心配したぞ。なんかあったのか?体は元気そうだが、どこか悪いのか?」
つくも:「いや、ちょっと頭のビョーキ。
馴れ合うの好きじゃないんで、たまに1人になりたくなるんです。」
ハル:「ちゃんと食べてたのか?寝れてるか?
1人になりたい気持ちは理解できないわけじゃないが、人間1人より誰かといる方が暖かく出来てるんだぞ。」
つくも:「カウンセラーみたいすね(笑)
で、なんでそこまで俺に連絡くれたんです?」
ハル:「それは、あの時、一緒に飯食おうって言ってたのに、突然瞳が…いや、来客があって、つくも帰ったから、気を遣わせたと思って悪くてな。」
つくも:「いや、込み入った話っぽかったし、気にしてないです。
そのためにわざわざエレアに家聞いたんですか?」
ハル:「あ、勝手に聞いて悪かった。
いきなり家知られたら嫌だよな。」
つくも:「それはエレアで発散したんで、もう気が済みました。」
ハル:「俺が一方的にエレアに言わせたようなもんだから、あんまりエレアを責めないでやってくれないか。」
つくも:「大丈夫ですよ。聞けばわかりますけど、大したことはしてません。
で、家まで来た理由は?」
ハル:「それは、前に話した法定代理人の件だ。もう12月だし、手続き早くしないと、大学の提出書類とかもあるだろ?」
つくも:「それで?」
ハル:「まだ数回しか会ってないのに、信用してくれって言うのは、図々しいとわかってる。
でも、どうしても俺はつくもをほっとけないんだ。
俺を法定代理人にしないか?」
つくも:「ありがとうございます。
すごいありがたい話ですけど、遠慮させてもらいます。」
ハル:「俺はそんなに信用ないか?」
つくも:「俺は、前も言った通り、大人は基本みんな汚いと思ってます。ただ、ハルさんには汚さを感じません。だから遠慮します。」
ハル:「どういう意味だ?ある程度は、信用してくれてるのか?なら、なんで?」
つくも:「ハルさん。
ハルさんみたいな甘ちゃんエリートには思い付かなかったかもしれませんけど、法定代理人になるってことは、いい時だけ後見人になるわけじゃなく、俺がなんか犯罪犯した時の責任も被ることになるんですよ?」
ハル:「まぁ…それはそうだな。
でも、お前がもし何かに巻き込まれても、俺は一緒に責任とってやるぞ?」
つくも:「だからハルさんは甘いんです。
俺は、巻き込まれて、じゃなくて、自分で騒動を起こすんです。」
ハル:「どういうことだ?」
つくも:「ハルさんは、俺が16の頃からホストやってたのは知ってますよね。」
ハル:「ああ、そう言ってたな。」
つくも:「そのホストになるのも、店に行って雇ってくださいって、なったわけじゃないです。
14の時日本に来てばーちゃんの家族と暮らしてて、15でばーちゃんの病気が悪化して入院したんで、俺だけばーちゃんの家族の家に残されたんです。」
ハル:「それは、前に言ってたジーサンもか?」
つくも:「そうです。でも前も言った通り、日本の親戚は俺のこと敵視してるんで、すげー居心地悪くて、15で家出しました。
日本語がまだ完璧じゃなかったんで、外国人の多い街、新宿に行きました。
で、そこで英語で話せる相手が見つかったんですけど、その人が仕事の斡旋もしてくれたんで、俺が働いてた店を紹介してくれました。」
ハル:「15で1人で新宿なんて、怖かっただろう…。」
つくも:「べつに元々お坊ちゃん育ちでもないから怖くなかったし、それ以上に家に戻るのが嫌だったんです。」
ハル:「アメリカに帰るのは考えなかったのか?」
つくも:「母親が体弱いって言いましたよね?体だけじゃなくメンタルも弱いんで、家出したなんて絶対言えなかったです。」
ハル:「つくもが想像以上に大変だったことと、ホストになった経緯はわかった。
でもそれがなんで法定代理人を断る理由になるんだ?巻き起こすってどういう意味だ?」
つくも:「ハルさん、もし奴隷として売られたくなかったら、どうすればいいと思います?」
ハル:「え?!唐突なら質問だな。
解放を訴える、とか?」
つくも:「甘いですね。答えは簡単です。
売られる側から、売る側になればいいんです。」
ハル:「どういうことだ?それとつくもに何の関係があるんだ?」
つくも:「突然街で会ったガキに、なんの見返りもなく親切に仕事紹介してくれるヤツなんていませんよ。
俺、最初は店に売られたんです。
俺自身知ったのはだいぶ後ですけど。
で、当然人気が出れば、今度はdollとして売れば金になりますよね?
ハルさんにわかりやすく言えば売春です。」
ハル:「そんな…。」
つくも:「俺もガキでしたけど、なんとなくその気配に気づいて、売られないためには…って考えた結果が売る側です。
幸いなのか、もう後がない状況だったんで根性だけは座ってたし、俺こんな体つきですけどアメリカにいるとき軍人から格闘技習ってたんで喧嘩は自信ありました。
後はホストで売上ダントツに上げて、その3つを持って『売る側に回せ』って凄んだんでふす。
結果、luckyなことに、そっち側に回れました。」
ハル:「………。」
つくも:「それからは、なんでもやりましたよ。
自分はクスリやりませんけどヤバイ薬の売買とか、売春の斡旋とか、偽造パスポートとか集団暴行とか。
見た目がガイジンなんで、補導とかにあったことはないですけど、もしあってたら鑑別所どころか年少入りは間違いなかったですね。
ま、気分いい仕事じゃなかったけど、おかげでヒエラルキーのトップまで行けたんで、新宿中心に夜の世界は生きやすくなりました。」
ハル:「もういい、もういいから…。」
つくも:「いや、最後まで聞いて下さい。
そんなんで昼の開成高校の優等生と、夜の優等生の二面ができました。
問題はここからです。
もう18になったんで、あんまヤバイことしてると年少どころか刑務所行きも有り得るんで、一応、夜の優等生は卒業しました。
ホスト辞めてからは、まぁ行きたくない理由もあったし、新宿らへんには行ってません。
ただ、1度出来た悪いつながりってのは、簡単に切れません。こっちが相手の弱みを握ってるように、相手にも握られてる可能性ありますから。
だから、今後俺がまた追い込まれた時、悪事に手を染めないとは言えません。
甘ちゃんなハルさん向けに言っとくと、警察が闇社会に動いてくれるのは1部の裏取り引きがあったときだけなんで、警察に頼ることはできませんよ。
俺はまた売られそうになれば、同じことを繰り返します。」
ハル:「それでもつくもには、後見人が必要だろ?」
つくも:「そうですね。だから金で解決するかとも考えてます。」
ハル:「バカヤロー!
そういう意味で言ったんじゃない。
単に法定代理人だけなら、金で解決できるかもしれん。
でも、そのお前が一人で背負ってきた苦痛は、金は背負ってくれない!
俺は、お前のその裏社会で生きて来た過去も一緒に背負ってくれる後見人のことだ。」
つくも:「ハルさん、俺の話聞いてました?
過去だけじゃなく、この先二十歳になるまでの2年間でも、俺はまた闇に手を染めるかもしれないんですよ。
わざわざ犯罪者の肩持つやつがいるわけないでしょ。」
ハル:「ここにいる。俺がなる。
お前の背負ってきた苦痛も、これから乗り越えなきゃいけない試練も、俺が一緒に背負ってやる!」
つくも:「お言葉は嬉しいですけど、犯罪に巻き込まれれば、社会的信用もなくなるし、会社だって首になるかもしれない。」
ハル:「社会的信用がなんだ、会社がなんだ。それくらいでお前の背負ってるものの重さを減らしてやれるなら、俺はそんなものは怖くない!」
つくも:「…かっこいいこといいますね。
じゃあ婚約者はどうするんです?
ハルさんの信頼が地に落ちたら、婚約者も泣かせることになりますよ。」
ハル:「瞳は、元婚約者であって、今は付き合ってもいない。そして、もしよりを戻すって話になっても、それは断る。」
つくも:「やめてくださいよ。
お人好しのハルさんはともかく、全く関係ない瞳さんまで巻き込むなんて。」
ハル:「話題から逸れるから、理由は今度話すが、確かに今はすぐに縁を切ったりすることはできない。
でも俺の中でもうケジメはついてるんだ。
つくものこと関係なく、瞳とよりを戻すつもりは無い。」
つくも:「…….だから、嫌なんだ。
大人はみんな汚いのに、ハルさんは汚れてない!そんなハルさんを俺が汚すのは嫌なんだ!」
ハル:「お前のためだったら、いくらでも泥まみれになってやる。
なぁ、つくも、お前さっきから泣いてるの自覚してるか?」
つくも:「え?あ…なんで…」
ハル:「それだけ待ってたんだよ。
お前の全てを受け入れてくれる人を。
そこに俺が現れた。
汚れてない?カッコイイじゃないか!
正義のヒーローみたいだ。
でもつくもが望むなら、一緒に悪の親玉でもやってやる。
頼むから、頼むから、もう1人で抱え込まないようにしてくれ。」
つくも:「ハルさん…。」
ハル:「まだ信用できなくてもいい。
前に言ったろ?
俺はつくもに信用される大人になる!って。
そして、つくもはなにもしなくていいって。
とりあえず法定代理人の手続きだけ進めないか?大学困るだろ?
俺が法定代理人になった後、もしお前が俺以上に信頼できる人になったら、その時はその人に代わってもらえ。」
つくも:「…一晩考えていいですか?」
ハル:「もちろんだ。
明日俺は休みで家にいるから、気持ちの整理ついたら、うちに来い。
んで、鍋だな!」
つくも:「でた、鍋(笑)」
ハル:「おう!もう12月だから、上手い具材たくさん出てるからな(笑)」
つくも:「ハルさん、うまく言えないけど、っていうかありきたりだけど、ありがとうございます。
法定代理人になってもらうかは別として、話引かないで聞いてくれて。」
ハル:「お安い御用だ。
じゃあ、終電もあるから帰るけど、明日絶対うちに来いよ!
じゃ、おじゃましました。」
つくも:「おかまいもできませんで?」
ハル:「よく知ってるな!
ははっ。日本語大好きなつくもらしい!
じゃあな。」
バタン
(部屋につくも一人)
つくも:「俺、なんで泣いたんだ。
ってか、なんで今も泣いてんだよ。
くそっ。止まれよ。
うっ。うっ。うっ。………」
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