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第90場 麻布十番
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【第90場 麻布十番】
(翌日 17:10頃)
ハル:「つくも!悪い!待たせた!」
つくも:「大丈夫っすよ。今来たばっかなんで。」
ハル:「でも俺が17時って言ったのに、遅れて…。」
つくも:「瞳さん、そんな悪いんですか?」
ハル:「いや、手術は上手くいったんだが、精神的にやっぱりちょっと不安定でな。」
つくも:「なら無理して17時にしなくても、時間遅らせるとか連絡くれれば。」
ハル:「いや、それは俺が納得いかん!
これ以上、つくもに負担かけたくない。
それと、俺自身が早く話を聞きたかったんだ。
店、すぐそこだから、行くか。」
(個室の飯屋)
ハル:「飯屋って言うか居酒屋だが、個人的で大事な話だから、個室の方がいいと思って。
幸いつくもは二十歳に見えるし、問題ないだろ。」
つくも:「別に俺はどこでも。」
ハル:「とりあえず飲み物頼むか、ビールか?」
つくも:「あ、はい。」
ハル:「で、手続きは無事済んだのか?」
つくも:「はい、弁護士に書類提出するだけだったんで、一時間くらいで終わりました。後は家庭裁判所に行くだけです。」
ハル:「そうか…。」
店員:「お待たせしました。生2つです。」
つくも:「じゃ、お疲れ様でーす。」
ハル:「おう。」
つくも:「やっぱドライうまっ!」
ハル:「なぁ、その今日代理人になってくれた人の話だが、もう少し詳しく話してくれないか?」
つくも:「はい。えっと株式会社1518と邂逅の社長やってる人です。」
ハル:「え?それって…」
つくも:「名前言うより、写メ見せろって言われました。この人っす。」
ハル:「社長?!」
つくも:「だから、色々な会社やってるって…」
ハル:「そうじゃなくて、その人、津田さんって人だろ?俺の会社の社長だ。」
つくも:「え?終英社の社長でもあるんすか?
それは知らなかった。」
ハル:「津田社長が法定代理人になってくれたのか?どういう出会いだ?」
つくも:「そうです。津田さんに法定代理人になってもらう手続き進めてます。
出会い?んー、人の紹介すね。
『金で動いてくれそうで、社会的信用のある人』を探してた時、『金では動いてくれないけど、興味持ったら動いてくれて、社会的地位もある人』って紹介されました。」
ハル:「なんでっ!それは、確かに昨日今日のことは、俺が悪かった。でも他人を頼るくらいなら、なんで俺に…。」
つくも:「いや、昨日も言いましたけど、ハルさん落ち着いてください。
津田さんに話持ってったのは、ハルさんが俺の家に来てくれて、俺の過去を話す前です。
でも津田さんが、ちゃんとハルさんと話し合いしてから、ダメだったらもう一回来い、って言ってくれてたんで。
だけど、その、言うの小っ恥ずかしいですけど、ハルさんに過去話して受け入れて貰えたんで、ハルさんを信用して、法定代理人になってもらうつもりでした。
津田さんにもその報告して、津田さんの顧問弁護士とか紹介してもらってたんで、すぐ弁護士の話が進んだんです。」
ハル:「なるほど、通りで手回しがいいと思ったよ。」
つくも:「んで、昨日は最初の弁護士に電話して時間変更掛け合ったけどムリで、他にも何人か紹介してもらってた弁護士にもかけたんですけど、さすがに昨日のあの時間から今日の予約はできなくて。
切羽詰まってたとこに、津田さんから連絡あって、内容報告したら、津田さんが仮に法定代理人になってくれる、って話になったんです。」
ハル:「ずいぶんと社長のこと信頼してるんだな…。」
つくも:「そうっすね。なんの見返りも要求せずにこれだけ力になってもらったんで、ある程度は信頼してます。
性格的にも、読めないとこの方が多いけど、俺の野生の勘が悪人じゃない、とはいってます。」
ハル:「ずいぶんと親しそうだが…?」
つくも:「俺、バイっすけど変な関係じゃないっすよ。今は一方的に頼らせて貰ってる恩人です。」
ハル:「その写メは?ずいぶん仲良さそうだな。」
つくも:「それは、名前出すより写真の方がハルさんに伝わるから撮るぞって言われただけで。
ってか、さっきからなんか言葉にトゲを感じるんすけど。」
ハル:「いや、悪い。つくもに怒ってるとかではないんだ。ちょっとな。
それで、法定代理人は代わって貰えるんだろ?」
つくも:「はい。そう言ってました。
でもそれは『しかるべき時』が来たらで、その『しかるべき時』ってのは、津田さんが決める、ってのが法定代理人になってもらう条件みたいな感じでした。」
ハル:「全ては社長の手の中か。」
つくも:「さっきからどうしたんですか?」
ハル:「いや、たぶんつくもも感じてると思うが、社長は一筋縄ではいかない人だ。
俺では全く想像できないとこを行く。
すげーあったかい人ではあるんだが、だからと言って、「はい、わかりました」って話を聞いてもらうことはできない。
ちなみに俺はミジンコと呼ばれてる。」
つくも:「ミジンコって(笑)微生物扱い(笑)
まあ、素直に要求聞いてくれないのは、想像できますね。
でも俺の予想では、俺の行動ってより、ハルさん次第って感じでしたよ?」
ハル:「そうだな。
よし!そうと決まったら、明日出社した時、面会申し込みしてみる!
会社にいないこと多いから難しいかもだが、とにかく一刻も早く!
明日仕事終わったら、つくもにも連絡入れるから。」
つくも:「あー、それなんですけど、俺、明日家裁で手続き終わったら、ちょっと1週間くらい海外行くんで、連絡あんま取れないと思います。」
ハル:「この時期に海外って、勉強は大丈夫なのか?どこに行くんだ?」
つくも:「勉強はこないだの外部模試でも全部S判定だったんで問題ないです。行き先は…カナダのトロントの従兄弟に会いに行きます。」
ハル:「そうか。この時期に行くんだから、なんかよっぽど事情があるんだな。
でも、こっちからは定期的に連絡入れるから、そっちもWi-Fiあるとことかで連絡できたら返してくれないか?」
つくも:「わかりました。
じゃあ、話はとりあえず一旦終了で大丈夫ですか?」
ハル:「え?ああ。まずは俺が社長に直談判することだな!」
つくも:「んじゃ、飯食いません?
俺、そろそろ腹減ったんで。
ビールも飲みたいし。」
ハル:「あ!気づかなくて悪い!
なんでも好きなもの食え!」
(翌朝)
(ハルの会社の社長秘書室)
ハル:「すみません、ジャンプ~編集部の杉田と言いますが、社長とお話がしたいのでアポイントを取りたいんですが。」
秘書:「生憎ですが、社長は1週間海外に行っておりますので、すぐにアポイントはお取り出来ません。」
ハル:「1週間海外…?
すみません!それって行き先どこですか?」
秘書:「私的旅行と聞いておりますので、お答えしかねます。」
ハル:「じゃ、合ってたらでいいんで、教えてください。カナダのトロントですよね?」
秘書:「…はい。そう聞いております。」
ハル:「マジかよ…。
じゃあ、社長が戻ってきて一番早く空いてる日にアポイント取らせて下さい!」
(会社の屋上)
ハル:「つくもが従兄弟に会いに行くのもトロントで、社長の私的旅行もトロントって、それ絶対一緒に行ってるだろ。
あーっ!
…って、なんで俺がイラつくんだ?
俺の他にも、大人を信用できるようになってきたのはいいことじゃないか。
でも、なんだろ、この喪失感。」
(その後ハルは屋上で知らぬ間に二時間過ごし、編集長からのカミナリを頂戴した)
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