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桔梗。
初めて聞いた名前に、
初めて真剣に聞く彼の声。
久々に放つ声に不安を覚えた。
「…か、
夏鈴」
初めてこの人に対して名乗ったかもしれない。
「夏鈴くん。
俺は今初めて、
君の名を呼んだよ」
そう言われて僕は俯いた。
「僕らは、
互いに何も、
知らなかったんですね」
不思議と敬語になる。
「そうだね、
そして互いに互いを信じていなかった」
桔梗はクスッと笑った。
「僕は貴方に謝らなければならない」
僕がそう言うと、
「俺の方こそ…、
君を、
君の気持ちを試していたから」
とてつもなく寂しそうな表情を見せた桔梗。
それは、
最後に見た時と同じ表情だった。
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