アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
とは言っても、すぐに良い案が思い付くわけもなく、その日もまた夜を迎えた。
「おやすみ、飛鳥」
「あぁ、おやすみ」
いつものように、同じ布団に入る。
が、そこから先はいつもとは違っていた。
いつもなら、蒼空は布団に入った途端に俺を抱き寄せ、そのまま俺を求めてくる。
同じ屋根の下で暮らして一週間、毎晩例外無くそうだった。
「……蒼空?」
「ん?どうした?」
声をかけてみても、平然と返される。
…朝の不安が頭をよぎる。
もしや、俺じゃあもう満足できないから…?
…いや、きっと今日は疲れてるだけだ。
「なんでもない。」
さすがに毎晩毎晩というのは…、結婚した男女の夫婦でも続かないはずだ。
今日は、たまたまなのだ。
自分にそういい聞かせながらも、なかなか寝付けなかった。
そんなときだった。
「飛鳥、寝た?」
「…いや」
蒼空に声をかけられた。
返事をして蒼空の方を向いたとき、彼の筋肉質な腕が俺を捕らえた。
「…このまま、聞いてほしいんだけど」
何を言われるのだ…。
不安になりながら、頷く。
「飛鳥さ…、俺のこと、…どう思ってる?」
「…はっ?」
急な質問に驚くと同時に、身体が熱を持ち始める。
「っ、…それは、……」
蒼空は…
俺の初恋の相手で、世界で一番大切な人だ。
そんなこと俺が簡単に口にできるはずもなく、黙りこんでしまう。
「…俺、飛鳥に嫌われたらどうしようって、不安なんだ…」
腕にかすかに力がこもると同時に彼の口から零れた言葉は、俺にとっては意外なものだった。
「…なぜ、俺がお前を嫌う…?」
「だって、俺、…飛鳥のこと好きすぎるくらい大好きだから…」
俺を抱き締める腕に、さらに力がこもる。
蒼空のナチュラルな告白に少しだけ舞い上がる俺に気付かず、彼は続ける。
「その、抑えがきかないっていうか…」
そして、俺の肩に顔を埋めて言った。
「俺、ずっと、飛鳥に……性欲処理の相手って思われたらどうしよって」
「……は?」
「っ、ほら俺っ、ここんとこ毎晩飛鳥のこと…抱いてる、からさ。それが目的で一緒に住みたいって言い出したのか、とか思われたくないしっ、それに」
「蒼空…?」
「俺っ、…飛鳥に、無理、させてるの、分かってるから…」
捲し立てるように喋りだしたかと思うと、今度は急にしおらしくなる。
「普通に考えたら、痛いよな…。」
蒼空には悪いが、彼の想いを聞いて俺の不安は消えていった。
蒼空はこんなことで器用に嘘をつける人間ではないから、今の話は全部本心だ。
…逆、だったんだ。
愛想をつかすどころか、俺の身体を心配して…しかも、蒼空も俺と同じように不安を抱えていたんだ。
「飛鳥にとって初めてのことだし…ゆっくり、慣れていくべきなんだろうってのも、分かってるし…」
「蒼空」
素直に嬉しい。
だから、俺も。
蒼空に気持ちを伝えなくては。
「…俺は、蒼空が好きだ」
「っ、うん」
明らかに声のトーンが上がる。
そして、俺を抱く腕の力が元に戻る。
そこで、俺は気付いてしまった。
俺の太股に、当たっている。
…たぶん蒼空は気付いていないが。
「一回、離せ」
「…うん」
蒼空に抱き締められるのは、落ち着くしものすごく好きなのだが…さすがに、一度離してもらう。
そこで蒼空の顔を見…彼の涙に気付く。
「なぜ…泣くっ?」
「…だって、嬉しくて」
その涙を指で拭ってやり、唇を触れ合わせる。
「……飛鳥」
「俺も、不安、だった」
彼の顔を見て、言う。
薄暗い部屋だが、蒼空の顔だけは何故かよく見える。
「その、…行為の後、お前が必ず布団を出ていくから、俺では満足できないのかと…」
「っ…気付いてたんだ…」
蒼空が手の甲で顔を隠した。
「あぁ」
「いや……気付かれてるかもとは思ってたけど…なんか、指摘されると恥ずかしい…」
「…悪い」
「気持ち悪くないの?」
「…は?」
目だけを覗かせ、俺に問う。
…気持ち悪い?
意味が、理解できない。
「…だって、俺…。…はっきり言うけどさ!……飛鳥に隠れて、飛鳥で抜いてるんだよ?」
「っ…!」
顔が熱い。
そんなこと、気にもしたことなかった。
よくよく考えたら当然のことなのだけど。
直前の情事を、思い出さないわけがない。
「そんなわけ、ないだろう…!俺は、お前の恋人だぞ…」
蒼空を直視できず、布団に潜ってそう言うと、返ってきたのは嬉しそうな声だった。
「そ、か…。」
沈黙が空間を支配する。
自分の鼓動が大きく聞こえる。蒼空に聞こえてしまうのではないかと思った。
しばしの沈黙を破ったのは、蒼空だ。
「俺!飛鳥じゃ足りないとか、思ったことないからね!」
「え」
布団に 潜ったまま、身体だけを蒼空の方へ向ける。
「飛鳥の身体の方が大事だし。…っていうか、飛鳥こそ、嫌じゃないの?」
「何が」
「…男に抱かれるの」
今更何を言っているんだ。
「嫌なわけ、ないだろう」
俺たちは、すれ違っていたのだ。
お互い不器用で、思っていることを口に出せず、相手に対する不安だけを勝手に募らせて。
「…じゃあ!その…今日も、飛鳥のこと抱きたい…なんて…」
布団の中から、顔を出す。
俺をまっすぐに見つめてくる蒼空と目が合った。
「…ダメ、かな?」
「…そんなこと、きくな」
そう告げるや否や、蒼空が俺をいつものように抱き寄せた。
───
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 4