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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ4
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「………別に。俺も同じだから」
「ぇ…………」
「同じなんだよ、俺も。」
上げられた視線が驚きの色を見せている。
俺が立花 直に興味を持ったのは、俺自身が同じ罪を背負っているからだ。
“親殺し”、理由など尋ねられることもなく、ただ起こった事象でつけられた罪。
今でも鮮明に思い出せるあの日の記憶を、考えることがないように蓋をする。
もう終わったことだ。
「そう、だったんですか……。それはまた奇妙な巡り合わせですね。」
それから少しの間、無言で歩き続けた。
「倉橋さんはこれからどうなさるんですか?」
「………適当に生きてくだけだ。行く宛なんてない。これから先、ずっと一人で生きていく。生きていけるかも怪しいけどな。」
「僕もです。そんなところも同じなんですね。」
一人心地に納得して、それから立花は真っ直ぐ俺を見る。
「…………何?」
「一人で、生きていくなら」
そこで一旦息をついて、ふいに右手を差し出された。
「二人で生きてみませんか?」
意図するところが分からず、眉間にシワを寄せる。
会ったばかり、顔は知っていたから話したばかりの奴と一緒に生きていこうだなんて、そんな馬鹿なことを普通考えない。
「僕には何もない。倉橋さんもそうでしょう?」
「…………」
「僕は過去を悔いてる。けれど起きてしまったことは変えられない。だからせめて、これからは人を幸せにして生きていきたい。」
「…………」
「それが僕の生きる糧になる。僕が貴方に幸せを与えます。貴方が幸せであり続けられるようにする。だから僕と生きてみませんか?」
可笑しな奴だと思った。
昔願った幸せは、何処にもなかった。
幸せは姿を見せてはくれなかった。
そのうち幸せとは何なのか分からなくなった。
コイツはその幸せを見せてくれるのだろうか?
気付けば差し出された右手を取っていた。
「………面白い。」
「交渉成立ですね。よろしくお願いします。」
何もなかった世界に、生きる希望がちらついた気がしたのだ。
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