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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ5
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直side
囚われの檻から釈放されて半年が経った。
同じ日に出所した倉橋さんと共に町外れのアパートを借りて、現在は二人で暮らしている。
彼の最初の印象は、『冷たい』だった。
いつも一人で、誰かと話している姿さえ見たことがなかった。
変わらない表情は何を考えているのか分からない。
揺るがない絶対零度の心。
周りへの圧倒的な拒絶に、僕は結局一度も話しかけることは出来なかった。
釈放だ、と投げ出された外の世界で一番最初に見たのは倉橋さんの姿だった。
あの瞬間、何故だか胸が鳴った。
声を掛けて振り向いた表情は相変わらずで、それでも真っ直ぐ向けられる視線から目を離せなくなった。
僕には悔やんでいる過去がある。
人の為だと思った選択は間違いだった。
ただ、ただ………幸せになってほしかっただけなのに。
僕は間違えてしまったのだ。
許されるだなんて思っちゃいない。
けれどもし、この濁ってしまっている目に光が射せたなら…
倉橋さんに幸せを与えることが出来たなら……
或いは僕は少しは救われるのではないかと、浅はかな考えが頭を過った。
時刻は午前8時、そろそろ起こさないと遅刻してしまう。
朝食を並べ終えてベッドが置いてある寝室へ向かう。
二つ並んだベッドの右側の布団が盛り上がっていて、人が寝ていることが分かる。
規則正しい呼吸を揺り起こすのは少々気が引けるが仕方がない。
寝室に足を踏み入れるとベッドに近付き軽く揺する。
「倉橋さん起きてください。朝ですよ。」
しかしいくら声を掛けてもベッドからは唸る声が聞こえるだけで、起きる気配はない。
一緒に暮らし始めてから日常になったこの光景。
倉橋さんは朝が弱い。
「倉橋さん、遅刻しますよ?」
「うるさい……」
「うるさくしてるんです。ほら、起きてください。温かい珈琲も淹れてあります。」
漸く布団から目だけを出した倉橋さんは最大に舌打ちをかましてくる。
僕は気にするでもなく、寝室を後にして淹れたての珈琲をマグカップに注いだ。
程なくして倉橋さんも起きてきて、ダイニングに腰掛ける。
僕はその前にマグカップを置いて、向かいに座った。
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