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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ6
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「今朝はハムチーズトーストです。」
「……………朝はいらないって言ってる。」
まだ半分夢見心地なのか、ゆっくりと言葉を紡いでいる。
「ダメですよ、朝こそしっかり食べないと。」
僕の言葉に倉橋さんは眉間にシワを寄せた。
珈琲を一口啜って、それからトーストに手を伸ばす。
何だかんだ用意されたものはちゃんと食べてくれる。
美味しいと言われたことはないけど、残されたこともないから口に合わないわけではなさそうだ。
「今日は何時までですか?」
「…何もなければ18時ぐらいだな。」
「分かりました。夕飯、用意しておきます。」
倉橋さんは『何でも屋』のバイトを始めた。
時給が一番高かったと言う理由だけでそこに決めたようだ。
名前だけ聞くと怪しげなそのバイトも、特段文句もなく続けている様子から、悪くない働き先だと思っている。
僕はと言えば今は完全に養われてしまっている。
とは言っても先週までは僕も働きに出ていた。
珍しくもないコンビニのアルバイト。
仕事に文句があったわけではない。
僕はずっとあの檻の中にいて、その、自分の容姿なんて気にしたこともなかったんだけど……。
どうやら僕は成人男性にしては中性的な顔をしているらしい。
マンツーマンで仕事を教えてくれると言ってくれた店長に最初は何の疑問も抱いていなかった。
少しスキンシップが多い程度かなってぐらい。
けど段々とその行動が怪しくなった。
意味もなく体に触れてきたり、むやみやたらに二人きりになろうとする。
決定打となったのは、裏にある事務所で二人きりになったとき、突然押さえ付けられて首にキスマークを付けられた事だった。
あまりの事に頭が追い付かず、気付けば店長を突飛ばし、家に駆け込んでいた。
その日はちょうど倉橋さんはお休みで、けれどパニックになった頭でそんなこと忘れてしまっていて…
家に帰った僕は浴室に閉じ籠った。
汚くて気持ち悪くて、服を脱ぐのも忘れて、冷水を頭から浴びた。
どのぐらいの時間そうしていたかは分からないけれど、不意に浴室のドアが開く音がして、シャワーを、止められた。
見上げれば倉橋さんが僕を見下ろしていた。
「あ、倉橋さん……お帰りなさい。」
「……馬鹿が。俺はずっと居た。」
「え?ああ、そうでしたか……すみません、浴室独占しちゃってましたね。」
すっかり冷えきった体を無理矢理動かして浴室から出る。
そう言えばタオル用意するの忘れてた。
そう思って立ち尽くしていたら、柔らかな生地に体が包まれる。
「あ、ありがとう、ございます……」
タオルを手にした倉橋さんがいつもの如く無表情で僕を見た。
「仕事、やめれば?」
「え、でも……」
「幸い今働いてるところ稼ぎいいし、暫くは大丈夫だろ。」
「でも、やっぱりそれは……」
「家の事やって……俺は出来ないから。それがアンタを養う条件。」
「そんな事ぐらいでいいなら。」
「……ん。あとは自分で拭け。」
それから手早く体を拭いてリビングへ行くと温かな珈琲が用意されていることに、思わず微笑んでしまったり。
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