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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ7
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それから僕はコンビニのアルバイトを辞め、家事に専念している。
「そろそろ行く。」
その言葉に倉橋さんの皿を見れば、ハムチーズトーストは綺麗になくなっていた。
「お粗末様でした。いってらっしゃい、気を付けて。」
立ち上がった倉橋さんに倣うように僕も椅子から立ち上がる。
一緒に暮らし始めて僕たちの間にはいくつかのルールがあった。
一つ、食事は一緒に取ること。
一つ、挨拶は必ずすること。
一つ、相手を束縛しないこと。
一つ、互いに詮索はしないこと。
それから……
玄関で靴を履いて、倉橋さんは振り返る。
「……ん。」
と言って開かれた腕の中にすっぽりと体を忍ばせて、広い背中に手を回す。
最後のルールは僕がお願いしたもの。
一つ、離れるときはハグをすること。
倉橋さんは最初それはそれは嫌そうな顔をして見せた。
未だに僕の背中に腕が回ってくることはないけれど、最近はさっきみたいに腕を広げてくれるようになった。
「今日もお帰りお待ちしてます。」
「……行ってくる。」
笑顔で手を振り、閉められたドアを見つめた。
『人の体温って安心して、幸せになるね。』
そう僕に言ってくれていた人がいた。
優しく笑うあの人は確かに僕を幸せにしてくれていた。
少しずつ、少しずつ、倉橋さんにも伝わっていって欲しい。
「さて、洗濯でもしましょうか。」
洗濯して、掃除して、それから夕飯の買い出しでも行きましょう。
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