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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ9
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「うーん、やっぱり啓介の淹れる珈琲は格別だね。」
「………誰が淹れても一緒だ。」
と言いつつ、心なしか葉桜の口元が緩んでいた。
俺はそのやり取りを無言で眺めた。
「ーーそうそう、今日の依頼はこれね。」
上月が思い出したように俺に茶封筒を差し出した。
B5サイズの封筒から一枚の紙を取り出す。
「………ボディーガード?」
「そう。写真も入ってるだろう?彼がクライアントだ。」
言われて封筒を覗けば確かに一枚の写真があった。
取り出してみれば、写っているのは若い男。
見る限り俺よりも年下だ。
「……守るって何から?」
「んー、ストーカー。」
「…………ふざけてんのか?こいつ男だろ?」
「世の中には色んな趣向の人がいるからね〜。今日から一週間、君にはその子にずっと付いててもらうよ。必ずストーカーを捕まえること。ああ、もちろん早めに捕まえることが出来たなら、依頼はそこで終了だ。」
つまり俺はこの一週間でストーカーの変態野郎を捕まえないといけない上に、ずっと身を拘束されると言うことか。
「…………面倒だな。」
「そう言わずに。給料はいつもの倍だよ?」
にっこりと笑った上月に対し、俺は溜め息をつくしかない。
どうせ俺には断るだなんて選択肢はない。
踵を返して、つい今しがた通ったドアに足を進める。
「さすが、物分かりがいいね。」
上月の言葉を背中に受けたが、何も返さなかった。
事務所を出て、もう一度資料に目を通す。
簡単なプロフィールと通っている学校、自宅の住所、バイト先などが書かれいる。
雪見 瀬(ユキミ ライ)、大学二年生……ね。
この時間なら大学に行っているはずだ。
ここから二駅先が最寄りとなっている。
資料をしまって、歩を進める。
そう言えば、アイツには普通に帰ると言った気がする……。
連絡を取ろうにも俺達はその手段を持たない。
このご時世に、と上月にも言われたが俺達には必要がなかった。
ああ言うものは人との繋がりがあるやつが持ってこそ意味がある。
俺達に繋がりなんてない。だから必要ない。
かろうじて俺は上月に無理矢理持たされた仕事用の携帯があるが、立花との連絡手段はない。
一旦帰るか……とも考えたが駅とは反対方面になると思い直し止めた。
別にお互い子供じゃない。
少し家を空けるぐらいどうってことないだろう。
一緒に暮らしているとは言え、所詮は他人だ。
少し自嘲気味に笑ってしまうのは何故だろうか…。
考えたところで答えなど出るわけもなく、俺は駅へと足を早めた。
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