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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ10
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カフェの窓際に座り、珈琲を一口啜る。
視線は外に写る大学の正門だ。
だだっ広い構内をむやみやたらに探し回るのは得策ではない。
まして部外者がうろうろしていたら怪しまれて仕方ない。
帰宅時を狙うのが得策だろうと向かえにあったこのカフェで待機することにした。
幸い店内は空いていて、しばらく居座っても問題なさそうだった。
三杯目の珈琲を飲み干す頃、正門向こうにそれらしき姿が見えた。
手早く会計を済ませて、店を出る。
少し悩んで前から声をかけることにする。
正面から向かって歩き、行く手を阻むように立ち止まる。
怪訝な、そして怯えたような表情を見せる顔は確かに写真のやつと相違ない。
「あ、あの……僕に何かご用ですか?」
白い肌に大きな目、写真よりもずっと幼く見える。
男であっても可愛いと言う方が、しっくりくる。
……ストーカーされるってのも、分からなくはないな。
まあ、顔立ちで言えばアイツの方が綺麗だな。
と立花の顔が掠めた。
「………あの、」
「雪見 瀬だな?」
「え、はい……そうですけど」
「ストーカー被害の依頼を受けた。今日から一週間、お前に付かせてもらう。」
話がいまいち理解出来ないのか雪見は首を傾げた。
「ボディーガードだ、何でも屋に依頼しただろう?」
「そんな事頼んだ覚え……まさか」
言葉を切った雪見はポケットからスマホを取り出すと電話を掛け始めた。
「ーーもしもし、律(リツ)?雪見だけど、今何でも屋って言う人が目の前にいるんだけど何か知らない?……もう!どうして勝手なことするんだよ!?あ、ちょっ、こら!」
雪見の様子から一方的に切られたようだ。
「すみません、友人が勝手にお願いしたみたいで……。依頼料は払いますから、お引き取りいただいて結構です。」
「……それは出来ない。一度引き受けた以上、依頼はこなす。それに依頼料はその友人とやらが既に済ませてる。」
何でも屋は先払い制だ。
こいつが何も知らないということは、恐らく依頼主が払ったのだろう。
「でも、」
「与えられた期間は一週間だ。それまで我慢してもらう。ただし自宅や大学内にまでは立ち入らないから安心しろ。」
これ以上は会話する必要がない。
雪見の後ろに付くよう立ち回る。
「何言っても無駄な感じですね……。分かりました、一週間よろしくお願いします。」
困ったように眉尻を下げて雪見は手を差し出した。
俺はその手を取らなかった。
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