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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ11
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「これからバイトなんですけど…」
数歩先を行く雪見が振り向き様にそう言った。
「………いつも通りに行動してくれて構わない。」
「は、はあ……分かりました。」
確か資料に載っていたバイト先の住所だと、ここから電車を使わなければならないはずだ。
目の前を歩く小さな背中に声を掛けた。
「……おい、」
「な、何でしょうか?」
強張る声は緊張の色を見せていた。
振り返った顔もぎこちなく笑っている。
思わず口角が上がってしまった。
「ふっ、何も取って食おうって訳じゃない。そんなに緊張するな。」
そう言えば雪見は呆けた顔をして固まった。
「おい?」
「あ、ごめんなさい。まさか笑うだなんて思わなくて……その、もっとそう言う表情してくださった方が安心できます……。」
段々と小さくなっていく声からまだ怯えているのだと分かる。
「だから、その………もっとたくさん笑ってほしいです。」
可笑しな奴だと思った。
そう言えば立花も笑うと幸せが、だとか言っていたような気もする。
クライアントと関係性が崩れるのはあまり仕事上良いことではない。
「………努力はする。」
精一杯の譲歩だった。
それでも雪見の緊張は少し解けたようだった。
「ありがとうございます。それで、何か訊きたいことでも?」
「ああ、そのストーカーってやつの心当たりとかはないのか?それから具体的な被害内容が知りたい。」
雪見は眉尻を下げて、視線を地面へ投げる。
「心当たりとかは全くなくて……写真が送られてくるんです。」
「写真?」
「週二回、ポストに入れられていて……それも大量の写真で。最初は全然気にしてなかったんですけど、一週間前その日はたまたまバイトで帰りが遅くなってしまって、家に着いたのが日を跨いでいました。いつも通りに帰宅したら、またポストに写真が入っていたんですが、中身を取り出そうとした時、後ろから羽交い締めにされてしまって。」
そこで一旦言葉を止めて、雪見は自分の体を擦った。
その時の感覚でも思い出したのだろう。
顔色が悪かった。
「僕も男なのでこのぐらいって思ったんですけど、全然びくともしなくて……男の手が体を這いずるように巻き付いてきて、怖かった。逃げようともがいて、やみくもに振り回した腕が男に直撃して怯んだ隙に急いで家に入ったんです。」
心なしか雪見の体が震えているようにも見える。
ここまでの話で分かったことはストーカーが男であると言う事だ。
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