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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ13
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直side
時計の針が18時を知らせた。
作ったカレーの香りが鼻を擽る。
そろそろ帰ってくる頃かな……。
なんてぼやーっとテレビを見ていた。
干していた洗濯物も畳終え、掃除も一通り終わってしまい、倉橋さんの帰りを待つだけ。
いつもならもうドアが開いてもいい頃なのに、今日は全くその気配がない。
「……残業かな。」
今まで残業なんてしたことなかったけれど、仕事なんだから急な予定変更だって十分有り得る。
仕方ない、先にお風呂でも入ってしまおう。
もしかしたらその間に帰ってくるかもしれないし。
けれどいつもより長めに入った風呂から出ても、家の中は静まり返ったまま。
時刻は21時を回った。
「………何かあったんでしょうか。」
無事を確認したくても、僕にはその手段がない。
「やっぱり携帯持とうかな……。」
倉橋さんに言ったらどんな反応するかな…。
無表情で頷く?
嫌だと言って顔をしかめる?
その顔を想像したら少し笑えた。
でもその後には寂しさが残った。
「……帰って、来ますよね?」
誰にも届かなかった呟きが空気へ溶ける。
ソファーに腰掛けたまま、膝を抱えた。
立てた膝に額を乗せて目を閉じれば、規則的な秒針が耳に響く。
「……早く、帰って来て。」
この寂しさを僕は知っている。
ただただ時間が過ぎていくだけで、待ち人が永遠に来ない不安。
僕は知っている。
知っているんだ、この寂しさを。
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