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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ14
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洋side
雪見のバイト先は奇しくもコンビニだった。
雪見がバイト中は少し離れた場所から人目につかないよう店を見張った。
もしここが立花の働いていたコンビニで、ここの店長が雪見のストーカーだったなら……なんて安っぽいドラマだ。
忙しなく動く雪見の姿。
立花もあんな仕事をしていたのか、と姿を重ねた。
何故こんなにも立花の存在が頭を掠めるのか。
その答えは容易に分かる。
俺にとって思い出せる人間がそれしかいないからだ。
比べる対象がアイツしかいないだけ。
ただ、それだけ。
雪見のバイト中は特に何か起きることもなく、22時を少し過ぎた頃、バイトを終え、雪見は店の裏から姿を見せた。
「お待たせしました。もしかしてずっと外に?」
「……まあな。」
「体、冷えてませんか?」
「問題ない。それにお前が気にすることじゃない。」
雪見といい立花といい、何故そんなにも他人を気に掛けるのか……。
俺には理解できない。
「あの、もし良かったら……」
と躊躇いがちに差し出された小さいコンビニの袋。
「…何だ?」
「肉まんです。温かくて美味しくて、僕大好きなんですよ。」
見ればもう片方の手にも同じ袋が握られていた。
俺は差し出された袋を受け取り、中から湯気の立つ肉まんを取り出した。
「あー、よかったぁ。受け取ってもらえなかったらどうしようかと思いました。」
雪見は同じように袋から肉まんを取り出すと、パクリと一口口に含んだ。
「ふふ、おいひー」
はふはふと頬張りながら感想を述べると、口から湯気が見える。
「ふっ、慌ただしいな。食うか喋るかどっちかにしろ。」
「ふふ、だって美味しいんですもん。」
あまりに幸せそうに食べるから、俺も一口食べてみる。
口に広がる薫りと、溢れ出す肉汁。
確かに旨い。
「美味しいですよね?」
「………そうだな。」
満足そうに雪見は笑い、自宅までの帰路に着く。
俺はその背中を追い、周囲に警戒もしたが怪しい影は見当たらなかった。
雪見が自宅に入ってから4時間が経過した午前3時。
身を潜めながら様子を伺っていたが、何も動きはなかった。
帰宅時ポストに例の写真が入っていただけ。
朝まで雪見は家から出ないと言っていた。
今のうちに一度帰って着替えなどを済ませるのが得策だな。
何分こうなる予定じゃなかったから、何の準備もしていない。
一応数日は帰れないことをアイツにも伝えておくのがいいだろう。
雪見の部屋の電気が消え、寝に入ったのを確認してから俺はその場を後にした。
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