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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ16
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直side
浴室から聞こえてくるシャワーの音に、ホッと胸を撫で下ろす。
ーーちゃんと帰ってきてくれた。
心臓がまだ少し早く脈を打っている。
ふぅーっと息を吐き出し、気持ちを落ち着ける。
倉橋さんを待つ時間、それが何時間にも何十時間にも感じられた。
もしかしたらもうあのドアを開けて、帰ってくることはないんじゃないかと思った。
昔、愛した人がそうだったように。
ドアから音がして、堪らず飛び付いてしまった。
ドアの向こうに立っていた倉橋さんは顔をしかめ、心なしか驚いたように僕を見た。
冷静になってみれば驚くのも無理はないと思う。
額、大丈夫でしょうか……瘤にならなきゃいいんですが。
全ての料理を温め直し終わったところで、倉橋さんがちょうど浴室から姿を見せた。
料理を並べたダイニングに腰かけてくれたので、僕もその向かいに腰掛ける。
カレーとサラダ、それから練習中の煮物。
アンマッチな組み合わせだけれど倉橋さんは文句を言わずに手を進めてくれる。
「あの……すみませんでした。額、痛みますか?」
「……それなりに。」
無表情だから痛がっているように見えないけど、多分痛むのは本当だろう。
手を伸ばして額にかかる前髪に触れた。
垣間見えた額は赤くなっているものの腫れてはいないようだ。
良かったと内心胸を撫で下ろしていると、伸ばしていた手を倉橋さんに掴まれる。
勝手に触れたことを怒られるだろうかと身構えた。
「………まだ冷たい。」
「え……」
「何を動揺してる?」
普段あまり合わさることのない瞳が真っ直ぐに向けられている。
僕は体の力が抜けるのを感じた。
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