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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ18
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洋side
携帯を持ちたいと言った立花に了承の返事をすれば、呆けた面をした。
それから慌てふためく姿は、面白かった。
色んな表情を見るのは存外悪くないな。
今の仕事が片付いたら買いに行ってみるか。
面白い組み合わせの遅すぎる夕食を終え、再び出掛ける準備をする。
その様子を立花は不思議そうに見つめてきた。
「あの、またお出掛けですか?」
「仕事。」
「え、またですか?」
「暫くはこんな感じだ。帰りはいつになるか分からないから、飯の用意はいらない。」
立花は何か考えるように黙りこみ、それから準備をしていた俺の元に寄る。
「僕も、一緒に連れていってくれませんか?」
何を言い出すかと思えば、また突拍子もないことを言う。
「遊びに行く訳じゃない。仕事だ。」
「もちろん分かってます。邪魔はしません。」
「………安全の保証はない。」
「構いません。僕は……一人で待ち続けることの方が怖いんです。」
立花は断固として引く気はないようだ。
「……もしアンタが危険に晒されたとして、きっと俺はアンタを助けない。」
「はい。それでいいです。助けてもらおうなんて思っちゃいません。」
それから目を伏せて、元々惜しい命じゃないと聞こえた気がした。
もちろんそれに触れることはしない。
「倉橋さん、お願いします。」
「………あと10分で出る。」
「ーーわかりました。ありがとうございます!」
立花は表情を明らめ、いそいそと出掛ける準備をする。
言った通り10分以内に準備を終え、玄関へ姿を見せた。
「……行くぞ。」
「あ、待ってください。」
立花の呼び止めにドアノブから手を離し、後ろを振り返る。
「ハグ、してませんよ?」
……一緒に出掛けるときも有効だったのか。
「別に離れないだろ。」
「でも出先で離れて、もう会えなくなるかもしれないでしょう?」
……大袈裟なやつ。
そういえばこうして一緒に家を出るのは初めてのことだ。
俺は短く息を吐き出し、立花に向けて軽く腕を広げた。
立花は満足げに懐に入り込んでくる。
「行ってらっしゃい、行ってきます。」
挨拶はどっちもするらしい。
律儀な奴だ。
視界で揺れる赤茶の髪。
少し悪戯心が湧いた。
ほんのちょっとした軽い気持ち。
回したことのない腕を、立花の背中に回してみた。
そうしたら、
「ぇ………」
腕の中のこいつは呆気に取られたような顔をして、
それからその顔を真っ赤に染めた。
「なっ……え……!?」
まともな言葉も紡げないぐらい動揺したらしい。
「ふ、ふはっ……なんて顔してんだよ。」
「だ、だってこんな……今までしてくださらなかったのに…」
「あー、ただの気紛れ。意味はない。」
予想以上に面白い反応だった。
アホ面を堪能し、体を離す。
「いつまでそうしてるつもりだ?ほら、行くぞ。」
「あ、すみません。」
ドアを開ければタクシーが一台停まっていた。
立花が準備している間に俺が呼んだものだ。
まだ朝日が見えない中、タクシーへと乗り込み、雪見のアパートへと向かった。
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