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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ23
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直side
運ばれてきた紅茶を一口飲めば、呼吸はだいぶ落ち着いた。
あんなに全力疾走したのはいつ振りだろうか。
喫茶店に入ってから一時間は経過したにも関わらず、未だ足には倦怠感が残っている。
チラッと目の前に座る倉橋さんを盗み見れば、倉橋さんは油断なく窓の外を見ている。
倉橋さんが変わり始めてるのは確かなことだと思う。
さっきみたいに笑ったり、こうして僕を一緒に連れてきたり……。
それに………
初めて背中に回された腕。
咄嗟のことで驚いて、動揺してしまったけれど
凄く嬉しい変化だった。
回された腕が温かくて、その温かさが心にも広がるようで……思い出すと幸せな気持ちになる。
って僕が幸せになっちゃダメなんですけどね。
僕が倉橋さんを幸せにしてあげなくちゃいけないのに……。
「…………忙しいやつだな。」
徐に呟かれた言葉に伏せていた目を上げれば、倉橋さんが僕を見ていた。
「ニヤついたり落ち込んだり、何考えてる?」
「いえ……大したことでは……」
「ふーん…」
深くは訊かずまた窓の外へ視線を移してしまう。
あ……せっかく興味を持って下さったのに、言い方間違ってしまった……。
もっと、もっと倉橋さんと心の距離を近付けないと。
「……さっき!」
身を乗り出して口を開いた僕に倉橋さんは瞠目した。
「さっき家を出るとき、腕を………腕を回してもらえて嬉しかったなって思い出してたんです。」
「……………」
「思い出したら今度は幸せだなって思えて、でも僕が幸せになっても意味なくて……僕は倉橋さんを幸せにするために一緒にいるのに。これじゃダメだなって。」
視線を下げたのは、また呆れた顔をされると思ったから。
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