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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ29
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直side
雪見くんが律と言う男性を連れ立って、部屋の中へと入ってしまった後、僕と倉橋さんの間に沈黙が流れた。
怒っているだろうかと倉橋さんの方へ視線を向けると、倉橋さんも僕を見ていて目があった。
咄嗟に逸らしてしまったことを少し後悔した。
勝手に動いてしまったこと謝らないと………。
頭ではそう思っているのに、口はなかなか開かない。
「……さっき、」
先に口を開いたのは倉橋さんだった。
「どうしてあんな事したんだ?」
「……危ないと、思って…」
「自分の身を呈して守ろうとでもしたのか?」
僕は少し間を空けて頷いた。
「……そんなこと頼んだ覚えはない。」
「はい、分かってます。僕が勝手にやったことです。すみませんでした。」
謝罪の言葉を言ったはずなのに聞こえてきたのは盛大な舌打ち。
「……違う。アンタは分かってない。」
「え………」
「…………いや、俺の言い方が悪いのか。」
倉橋さんの言っていることが分からず、僕は首を傾げた。
短く息を吐き出したと思ったら、倉橋さんの手が僕の頬に触れた。
「俺の為に自らを犠牲にするな。もっと自分を大切にしろ。」
「……………」
「アンタに命懸けで守ってもらっても、俺は喜ばない。………俺を幸せにすると言ったな?」
「……………」
「アンタが死んだら俺の幸せはどうなる?約束を放棄する気か?」
「……………」
「二人で生きると言ったのは、アンタだろう?」
「………………はい。」
そう、そうだ。
僕は、この人と生きたいと言った。
この人を幸せにしたいと言った。
「………貴方を幸せにするまで、死んだりしません。貴方とともに生きていきます。」
昔、果たせなかった約束を、今度は見失わないように。
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