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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ30
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それから倉橋さんは何かを考えるようにまじまじと僕の顔を見つめ、また短く息を吐き出した。
「………あの、何か?」
「アンタ、疎いよな。」
「…………?」
倉橋さんは言葉が少ないから何を言いたいのか分からない。
頬に触れていた手が僕の頭をグシャグシャと撫で、離れていく。
訳が分からない僕を余所に、倉橋さんは雪見くんの部屋のインターフォンを押した。
すぐに雪見くんが顔を出す。
「どうしました?」
「すまないが少しこの場を離れてもいいか?その男……依頼人が一緒なら一先ず危害は加わらないだろう?」
「大丈夫ですよ。律、今夜は泊まっていくので。もしあれでしたら、今晩の見張りはお休みしていただいても構わないですから。」
「いや、すぐに戻る。仕事だからな。戻るまで外出は控えてもらえるか?」
「わかりました。」
雪見くんは嫌な顔せず、倉橋さんの指示に従った。
「……立花、行くぞ。」
雪見くんとの話を終え、倉橋さんは歩き始める。
目的地が分からないまま、僕は倉橋さんの背中を追う。
しばらく歩いて、倉橋さんが振り向いた。
「おい、」
「は、はい…」
「どうしてそこなんだ?」
「え?」
「どうして後ろばかり歩く?隣歩けばいいだろう?」
眉間にシワを寄せ、不服そうに言った倉橋さん。
何だか胸がソワソワして、堪らず笑った。
「………なに笑ってる?」
「ふふふ、いえ、何だか倉橋さんらしくない発言だったので。すみません。」
更に眉間のシワを深くした倉橋さんに並び、僕達はまた足を動かした。
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