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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ31
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倉橋さんが足を止めたのは、
「ここって……」
「入るぞ。」
携帯ショップだった。
「あ、あの……」
「欲しいと言っただろ?」
中へ入ると空かさず店員が話しかけてくる。
幸い人が少なく、すぐに手続き出来るとの事。
僕には店員の並べる言葉の意味が分からず、対応は倉橋さんがやってくれた。
「どれがいい?」
好きな機種を選べと倉橋さんは促してくれたけれど、正直僕には違いが分からない。
仕方なく近くにあったシンプルなものを選んだ。
「色は?」
「えっと、じゃあ白で…」
そうしたら倉橋さんは店員にその機種の白と黒を頼んだ。
どうやら倉橋さんは色違いにするらしい。
細々な手続きを済ませ、簡単な操作説明が終わると店の外へ出る。
倉橋さんは二台のスマホを操作してから、僕に白い方を差し出した。
「俺の番号が入ってる。」
「あ、ありがとうございます。」
嬉しかった。
ただ純粋に嬉しかった。
頬が緩んでいくのが自分でも分かる。
「ふっ……また新しい表情(かお)をしたな。」
そう言う倉橋さんも今までより一番柔らかい表情だった。
でもそれは言わないでおこう。
「それじゃあ戻りましょう。」
僕はスマホを落とさないよう両手で握り、上機嫌で雪見くんの家の方向に足を踏み出した。
「立花、一旦家に帰れ。」
「え……」
その言葉に僕は動きを止めた。
やっぱり先程の行動を怒っていたのだろうか。
「さっきは本当にすみませんでした。勝手な行動でした。もう足は引っ張らないので…」
「はぁ……違う。そうじゃない。だから疎いって言ってるんだ。アンタ、顔色悪いから。一旦家に帰って休めって言ってるんだ。」
僕は目を丸くした。
それって……
「心配、してくださってるんですか……?」
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