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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ35
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雪見のアパートに着き、戻ったことを伝えようと部屋のインターフォンを押す。
すぐには応答がなく、暫くしてからドアが開いた。
しかし姿を見せたのは雪見ではなく、律と言う男。
「瀬なら寝てる。」
「そうか。これからまた見張りにつく。外出は自由にしてくれて構わないと起きたら伝えてくれ。」
「分かったよ。それにしても思ったより早い帰りだったな。恋人は置いてきたのか?」
「は?」
この律と言う男は変な勘違いをしているらしい。
「何を勘違いしている?立花は恋人なんかじゃない。綺麗な顔はしているが俺もアイツも男だ。」
「だから?そんなの関係ないだろ。好きな奴に性別なんて関係ねーよ。」
「………そもそも好きじゃない。」
根本的なことを返せば、意外だと言う顔をされる。
「へぇ、てっきりそういうもんだと思ってたわ。」
何故そうなるんだか……。
「でも立花さん、美人だからモタモタしてると誰かに持っていかれるぜ?」
コイツ、俺の話聞いてなかったんだろうか…。
「だから俺は別に好きじゃーー」
「ふぁぁ……俺も寝るわ。じゃあおやすみ。見張りよろしく。」
バタン、と閉まったドア。
やり場のない、何とも言えない気持ちが残った。
「くそ………」
誰にも届かない言葉を吐き捨て、見張りにつく。
雪見の言った通り、誰もポストに投函しに来る奴は居なかった。
時間が過ぎ去るだけで得られるものはない。
日付が変わる少し前、ポケットに入れていたスマホが震えた。
画面を確認することなく電話に出る。
相手なんて一人しかいない。
この先、このスマホに登録される番号なんて、
これ一つだけだ。
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