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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ37
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直side
倉橋さんとの電話を終えて、手の中のスマホを見る。
自然と頬が緩んだ。
胸がドキドキしてる。
緊張と、嬉しさと、どっちが勝っているのか分からない高揚感。
けれど何だか落ち着く声音。
思い出して、また少し笑って、出掛ける準備をしようとしたら、再びスマホが着信を知らせた。
画面には“洋”の文字。
倉橋さんが登録してくれたから、自分で入れたのだろう。
それが可笑しくてクスクスと笑った。
「はい、もしもし」
『……倉橋だ。』
「ふふふ、知っています。どうしました?」
僕の問いかけに、倉橋さんは若干口ごもった様子だ。
『……頼みがある。』
歯切れ悪く聞こえた言葉。
「頼み、ですか?何でしょう?」
『…………珈琲』
「え?」
『………アンタの淹れた珈琲が飲みたい。』
少し間が合ったのは、僕が固まってしまったから。
「えっと、珈琲ですか?」
『……………ん。』
「ちょっと待ってください。」
一旦耳からスマホを離し、慌ててキッチンへと向かう。
流し台の下の収納スペースを開け、目的のものを探す。
倉橋さんはホット珈琲しか飲まない。
だから、
「あ!あった。」
僕は探していたステンレスボトルを手にして、スマホを再び耳に当てる。
「倉橋さん?珈琲持っていけそうです。」
『………そうか、じゃあ頼む。』
「分かりました。では、また後で。」
通話を切り、お湯を沸かす。
僕は今、どうしようもないぐらい嬉しくて。
鳴り止まない心音を心地よく思った。
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