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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ38
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洋side
立花が合流したのは電話を切ってから1時間半が経過した頃だった。
「遅くなってしまいました。これ、頼まれていた珈琲です。」
差し出された銀色のステンレスボトルを受け取る。
「………すまない。」
「こういう時は“ありがとう”って言われた方が僕は嬉しいです。」
ニコッと微笑み掛けられ、受け取ったステンレスボトルを再び奪われた。
「…………ありがとう。」
「どういたしまして。はい、どうぞ。」
ボトルは蓋がコップになるタイプのもので、そこに中身を注がれ立花が手渡す。
受け取り、今度こそ口へと運ぶ。
立花の淹れる珈琲は薄すぎず濃すぎず、俺好みの味だ。
一度眠ってしまうとなかなか目が覚めない俺だが、これを飲むとスッキリと目が覚める。
「美味しいですか?」
「ん。」
「よかった。……倉橋さん、本当にお休みにならなくて大丈夫ですか?」
「平気だ。」
空になった蓋を返し、いらん心配だと額を指先で弾いてやった。
「痛っ……もう、何するんですか!」
「ふっ、ぐだぐだと口うるさいからだ。」
「せっかく心配しているのに……倒れても知りませんよ。」
額を抑え、拗ねたような顔をしている。
ああ、また……
こんな意味もないようなやり取りに、胸が熱くなる。
「倉橋さん?どうかしましたか?」
無意識のうちに立花をじっと見つめてしまっていたようで、不思議に首を傾げている。
「いや、何でもない。」
そう言えば、と立花の首に手を伸ばす。
「ぇ…………あの、」
あのキスマーク、すっかり消えたな。
あの日見た赤い印が付けられていた場所に指先を這わせた。
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