アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ45
-
男は地面の転がった際、足を捻ったようで呻き声を上げた。
これで逃げられることはない。
それより……
男から視線を外し、脇腹を抱え踞る立花に駆け寄る。
男と雪見の間に入ったのはもちろん立花だった。
「ご、ごめんなさい!僕のせいで……」
雪見は立花にすがるように謝罪をしている。
目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫ですから、そんなに泣かないでください。」
顔を歪ませながら立花は笑って言う。
それから近付いた俺にも微笑んだ。
「すみません、お仕事の邪魔をしてしまいました。」
「……………馬鹿が。」
痩せ我慢も程々にするべきだな。
傷を押さえている立花の手を避けて、着ていた服を捲り上げる。
傷は深くなく致命傷までは至っていない。
ただ少し出血が多い。
「…警察と救急車を呼んでもらえるか?」
雪見はコクコクと頷いたが、立花は首を横に振り、俺の服を掴む。
「僕は、大丈夫、ですから……だから救急車は、必要、ありません……っ」
「…出血が多い。医者に見せるべきだ。」
それでも立花は首を横に振り続ける。
「い、や……嫌です……病院には、行きたく、ないんです……。」
「…………………」
「お願い、します………」
「……わかった。雪見、とりあえず警察を呼んでくれ。」
雪見は返事をせずしてすぐに警察へ連絡を入れた。
「あ、りがと……ございます」
「……あの男を警察に引き渡すまで堪えろ。家で治療する。」
はい、と返ってきた声は弱々しかった。
「倉橋さん、立花さんを僕の部屋に運びましょう。」
「ああ……立花、少し揺れるぞ。」
自分では立ち上がれない立花を横抱きに抱え、雪見の部屋へ運ぶ。
「警察が引き上げるまでここにいるんだ、いいな?」
もう声を出す余裕がないのだろう。
頷きだけが返ってきた。
もう一度ストーカーの元へ行くと、動かない足を必死に動かし、地面を這いずって逃げようとする姿が目に入った。
やれやれ、と男の背中を思いっきり踏みつける。
「ゆ、許し、許してくれ!」
「……誰が逃がすか。」
それから少しして遠くからサイレンの音が聞こえてきたのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 269