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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ49
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いつもは立ち入らない事務所の奥の部屋には簡易ベッドが置かれていた。
そこに立花を降ろしたが、胸元を掴んでいた立花の手は離れない。
「そのままにしてあげたら?治療に支障はないから。」
上月に言われ、無理に引き剥がすことはやめておいた。
「さて、かなり熱があるみたいだけど風邪って訳じゃなさそうだね。少し見せてもらうよ。」
俺に伺い立ててから立花の服に手をかける。
一瞬ビクッと身体を強張らせた立花。
胸元にある手を握った。
「へぇ…」
上月はニヤニヤと俺を見る。
「何だ?」
「いやいや、ここに来るときはツンツンしてるイメージだったから、そんな顔もするんだなと思ってね。珍しいもの見れたよ。」
「……いいから、早くしろ。」
はいはい、といつもと変わらぬ調子で上月は立花の身体に目を通す。
「この包帯は?」
「俺がやった。少し怪我をした。」
「一度外すよ。」
包帯の下から出てきた傷は、昨晩見たときよりも赤黒く腫れていた。
「これは切り傷かな。」
「ああ、雪見のストーカーが切り掛かってきてな。雪見を庇ってコイツが刺された。」
「雪見って君の依頼人の……そういうこと。うちの仕事で怪我をしたなら責任もって治させてもらうよ。」
「出来そうか?」
「伊達に何でも屋なんてやってないからね。」
少し準備が必要だと、上月は部屋を出た。
「ハァッ………フッ…………ハァッ…」
額に掛かっていた前髪を避けてやる。
苦しげな表情に、もどかしく、歯痒い何かが込み上げてくる。
やり場のない気持ち。
何と呼ぶのかも分からないこの感情。
それは衝動的な行動だった。
立花の額に唇を寄せ、少しだけ触れた。
そんなはずはないのに、眉間のシワが和らいだ気がする。
それを見て、また何かが胸に込み上げた。
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